ここで、すでに去年のことになるが、98年に携わったプロジェクトについて述べておきたい。というのもこれらの大きなプロジェクトを無事にこなすことが出来たことは我ながら良かったなと思うと同時に、それが99年の一つのペースにもなっていると思うからだ。それは公立美術館を巡回する展覧会あり、海外で開催する国際展あり、日本での国際会議あり、イギリスでの国際審査員の役割あり、多彩なものだった。しかし反面、そのおかげでほかの展覧会や作家の活動に充分目が配れなかった。今後これほどたくさんの企画をこなすことがあるかどうか分からない。またそれがいいことかどうかも。
・「イタリア美術1945-1995 見えるものと見えないもの」展
・台北ビエンナーレ
・国際美術評論家連盟日本大会
・ターナー賞選考委員
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「イタリア美術1945-1995 見えるものと見えないもの」展 |
イタリア美術展は愛知県美術館の浅野館長(当時)と牧野さんが美術館開館より前から構想を練って開館の2年ほど前に私のところに相談に来たのが発端。最初は総合キュレーターにチェラントの名前が挙がっていたが、彼は最近はあまりにも偉くなってしまって、いろいろと大変だということになり、イタリア人の評論家抜きで実施しようという話になったのは3年ぐらい前のことだった。イタリアでの調査は美術館の拝戸さんと実施した。そのイタリア旅行は軒並みほとんどのアーティストに会うという貴重な体験となった。
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実現したのは愛知県美の強い意志と参加美術館が4館も集まったおかげといえる。重量級の作品が多かったので、輸送費も大きく、マネージメントも大変だった。もともとアルテポーヴェラを中心とした展覧会をやりたいという思いは私の中に大きかった。80年代に名古屋でICANagoyaという現代美術のオルタナティブ・スペースを始めた時に、 ボイスの後誰がヨーロッパの美術界を背負うことになるかと自問自答して、そのとき私はクネリスではないかと考えた。また、アルテポーヴェラの作風も、日本人にとって親しみやすいものだ、という思いもあった。そこで私は当時ローマのクネリスのところへ直接飛び込んで、あなたの展覧会でICAを開館したいと訴えた。かれは意気に感じてそれに応じてくれた。その後、パオリーニ、メルツとICAで個展を開催した。また90年代になってからは、新宿アイランドのパブリックアートで、ペノーネ、ファブロ、ゾリオ、パオリーニと仕事をした。だからアルテポーヴェラの展覧会は私にとって、やっと実現した懸案の企画であったといえる。
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イタリア展のカタログの中に一文掲載したが、日本の60年代美術とアルテポーヴェラとは明らかに親近性があり、また実際の交流も多々あったということは、今もう一度検証しておくべき時なのではないかということ、また、さらには60年代の外国の美術動向と日本の美術の関係について、今、見直していい時期ではないかというアカデミックな思いもあった。アルテポーヴェラはポストモノ派などとも、その感性を共有していると思うし、その後の日本の自然主義的な作家・作品も大きな意味で同じ流れの中にあると考えられる。もっともアルテポーヴェラのアーティストは、その後自分なりにヴォキャブラリーを発展させて、ヴァリエーションを膨らませながら作品を発表し続け、古く見えない。こうした点はやはり美術というものがどのような形で発展し、止揚していくべきかをよくわかっているなと思う。
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このイタリア美術展は、愛知県美術館の後、東京都現代美術館、米子市美術館、広島市現代美術館、そして台北市立美術館へと巡回し、やっと12月におよその作業が終了した。
このようなアカデミックであると同時に、内容も魅力的で、また錯綜した過去を歴史化する作業に関わるような展覧会が日本でもっと開かれてもいいのではないかと思う。それに日本の近い過去の検証も様々な角度から国家レベルでするべきだろう。30年代を歴史化する作業を広範囲におこなうべき時は実はすでに過ぎつつある。
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東京都現代美術館展示風景
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イタリア美術1945-1995――見えるものと見えないもの
会場:東京都現代美術館
会期:1998年2月1日〜3月22日
問い合わせ先:03-5245-4111
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1998
台北ビエンナーレ
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