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愛知  一藤木葵
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exhibition平治物語絵巻公開

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 現在、上野の東京国立博物館で「国宝展」が開催中だが、もしこれが日本にあったら、間違いなくそこに展示されていただろう。アメリカのボストン美術館から「平治物語絵巻」が里帰りした。
 ボストン美術館は、優れた日本美術のコレクションで知られている。明治の初期、ボストン美術館の草創期に、エドワード・S・モース、アーネスト・F・フェノロサ、ウイリアム・S・ビゲローらがボストンから日本へ訪れ、彼ら先駆者達の洞察力と実行力で、多くの日本美術が集められた。当時の日本は、明治という新しい時代を迎え、廃仏毀釈の名のもとで、古い日本の美術品が粗略に扱われていた。そうした中で、散逸しつつある優れた日本美術が彼らの手によって保護されたわけである。その後、同館の中国・日本美術部長として岡倉天心が続き、彼の知識と優れた鑑識眼でボストン美術館の日本美術は整理され、さらに新しい収蔵品も加わって、東洋美術、日本美術のコレクションが完成されていく。今回展示されている「平治物語絵巻」もこの時代、フェノロサによって購入されたものである。
 院政政治から武家社会へと大きく時代が動く中で、平治の乱が起こった。これにより源平争乱が幕を明ける。この平治の乱を記した軍記物語が『平治物語』で、それを絵巻物にしたのが「平治物語絵巻」だ。鎌倉時代にはすでに制作され、『看聞御記』という書物の永享8年(1436)の条に、比叡山に「保元絵」15巻と同規模の「平治絵」があったことが記されている。今回展示されている「平治物語絵巻」は、その「平治絵」の残巻とみられ、他に国内に「信西巻」「六波羅行幸巻」などが残されている。
 ボストン美術館の「平治物語絵巻」には、源義朝と手を組む藤原信頼が後白河法皇の御所三条殿を夜襲し、御所に火を放って焼き討ちする場面が描かれている。11紙にわたる長大な画面に、動的な主題を的確な描写力と力強い筆使いで生き生きと表現しているのが特徴だ。
 なおこの絵巻は、1983年東京と京都の国立博物館で開かれた「ボストン美術館所蔵日本絵画名品展」でも公開されており、17年ぶりの里帰りとなる。
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平治物語絵巻公開会場:名古屋ボストン美術館
   名古屋市中区金山町1-1-1 
会期:2000年4月11日(火)〜5月7日(日)
   10:00〜17:00(金曜は〜21:00) 休館日=日
入場料:一般1000円/大学・高校700円/小・中学生300円 
問い合わせ先:Tel. 052-684-0101 名古屋ボストン美術館

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exhibition企画展 空き地

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 「空き地」というと、どうしてもドラえもんのあの空き地を思い出す。土管が3本置いてあり、のび太やドラえもん、ジャイアン、スネ夫、しずかちゃんが集まっていたあの場所だ。野球をしたり、鬼ごっこをしたり、時にはジャイアンがリサイタルを開くこともあった。そこには必ず遊びがあった。
 ドラえもんは30周年を迎えた。オタクめくが、のび太は当初昭和39年生まれの設定である。1960年代に生まれた我々の世代にとって、あの空き地というのは元風景のひとつだ。自分の家の周りにも、土管はなかったがああした飾り気のない空き地がいくらでもあったことを覚えている。たいがいは、住宅になる前の造成途中の場所だったのだろう。そこは格好の遊び場だった。
 この「空き地」という展覧会、佐倉密という仮名を与えられたコレクターの収集作品をひとつの核として、「空き地」というテーマのもとに美術館が選んだ11名の作家の個別のブースから成り立っている。この一つ一つのブースが空き地のように展開していく。
 たとえば小沢剛は、グローブジャングルというどこの公園にもあるような遊具を使ったインスタレーションを展開している。またスタジオ食堂の須田悦弘は、原寸大の雑草の木彫を展示ブースの端に密かに置いている。福田美蘭は、展示空間の空き地、つまりデッドスペースを利用した作品を展示する。
 その一方で、川俣正はパリの空き地に建築用のクレーンを建て、街にクレーンの列を作るかつてのプロジェクトを発表している。また榎忠は、200丁の機関銃の鋳型で埋め尽くされたブースを作っている。そこには、おだやかで閉鎖的な街の空き地というイメージはなく、ダイナミズムすらある。さらに赤瀬川原平は1964年に発表した、その中に何が入っているか分からなかった缶詰の作品を、そのレントゲン写真とともに展示している。
 小沢や須田、福田は60年代の生まれ。やはり空き地という、どこか親近感を覚えるおだやかな街のデッドスペースとしての空間からの発想だろうか。その一方でベテラン達の空き地は、コンセプチュアルである。ただそこに共通しているのは、気合の入った、熱い美術ではないということである。つまりどこか遊び的な要素が入り込んでいるのだ。クレーンのプロジェクトは、完成されたらそれはパリという街の遊びだし、機関銃の並んだ風景は、反戦争といったイデオロギーより、子供の頃誰もがやった基地遊びや夢中になったSFアニメを思い出させる。まさにそれらは肩肘張らない今のアートの現在なのかもしれない。
 そして美術館というスペースは、これからの時代、街の空き地として遊びに満ちた空間ではならないと、この展覧会は語っているようだ。
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企画展 空き地会場:豊田市美術館
   愛知県豊田市小坂本町8-5-1 
会期:2000年3月7日(火)〜5月7日(日)
   10:00〜17:30 休館日=月曜
入場料:一般1000円/大学・高校800円/小・中学生500円
問い合わせ先:Tel. 0565-34-6610 豊田市美術館

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exhibitionふたつのフェルメール

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「フェルメールとその時代」
 フェルメールはレンブラントと並ぶ17世紀オランダ絵画最高の画家と呼ばれる。その作品の精緻な描写と透明感のある色彩は、印象派の画家からも高い評価を受けた。しかし彼の生涯は、正業が居酒屋の主人だったということ以外謎に包まれている。現在確認できる作品は、わずか35点。残されたデッサンもなく、また制作年数や工程の記録も全くない。
 この春、フェルメールの作品35点のうち6点が日本で見られる。そのうち5点は大阪市立美術館で、あとの1点は名古屋の愛知県美術館で。フェルメールの人物画は、縦横50センチほどの小品だが、何気ない一瞬に永遠の時間が凝縮されたような深遠な静けさを描き出している。彼は、デッサンのかわりにカメラ・オブスクーラ(暗箱)という道具を使っていたといわれる。一種の原始的なカメラで、暗箱のレンズをとおった光が半透明のスクリーンに像を結ぶ仕掛けの道具だ。いわば彼は、カメラマンの眼を持った画家とも言える。広角レンズを通したような、遠近感が強調された構図は、まさに写真のようだ。
 当時のオランダは、政治と経済の両面でヨーロッパ随一の力を持つ国として黄金時代を迎えていた。富を得た人々は競い合うように自宅の壁を絵画で飾り、その需要に応えるため画家たちも互いの技量を高め合った。そのなかにレンブラントやフェルメールがいたのだ。
 フェルメールの作品は、ヨーロッパやアメリカの主要な美術館に所蔵され、その希少性と質の高さから事実上門外不出の扱いになっている。他の美術館へ貸し出されることなどめったにないのが現実だ。そんな中、日本にあわせて6点、つまり彼の現存する全作品の約6分の1が、今、来ているのだ。
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レンブラント、フェルメールとその時代「レンブラント、フェルメールとその時代」

会場:愛知県美術館
   愛知県名古屋市東区東桜1-13-2
会期:2000年4月7日(金)〜6月18日(日)
   10:00〜18:00 
入場料:一般1200円/大学・高校900円/小・中学生600円
問い合わせ先:Tel. 052-971-5511 愛知県美術館


「フェルメールとその時代」

会場:大阪市美術館
   大阪府大阪市天王寺区茶臼山町1-82 
会期:2000年4月4日(火)〜7月2日(日)
   9:30〜17:00 
入場料:一般1500円/大学・高校1200円 
問い合わせ先:Tel. 06-6771-4874 大阪市立美術館


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