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ガーデン−現代美術をとおしてみる後楽園 |
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國安孝昌さんの作品設営風景
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國安孝昌 丸太とレンガを使用した作品
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前回も書きましたが、今は、もうこれしか書けません。
11月3日から後楽園でやっている屋外現代美術展「ガーデン」。
後楽園はほんとに素晴らしい場所です。毎日設営現場にいて、どこに目をやっても、つい見とれてしまいます。でも後楽園はほんとにめんどくさい場所です。2つの意味で。
ひとつは調整先となる関係者がともかく多い。それもたいていは、現代美術展なんて???か、食わず嫌いのまま評価を決めてしまっているところ。これ以上は書けません。
もうひとつは、ともかく資材の搬入経路がないこと。狭い、段差有り。バリアーだらけの場所なのです。そのことに絡めて、今回はすこし國安孝昌さんの作品設営を基点に思うことを書き連ねます。
國安さんは、国内はおろか世界各地での制作でいつも高い評価を受けています。もっともいつでもどこでも見られる作品ではないので、多くの方にその真価を認識してもらうのが難しいタイプの作家さんです。
幸い、昨年の箱根彫刻の森美術館での「森に生きるかたち」、そして今夏の越後妻有アートトリエンナーレと人目に触れる機会も多かったので、その圧倒的なスケールに驚かれた方も多いのではないでしょうか。
今回の後楽園での作品でもやはり丸太とレンガを使用しましたが、これは主催者側の提案で、いずれも岡山県産の杉の間伐材2千本と、リサイクル耐火レンガ1万個を使用しました。
しかしこの素材搬入に立ちはだかるのが後楽園。
まず丸太は6tトラック1車両に500本が積まれてきます。これを降ろすのが名人芸。トラックはけっこうなスピードでバックして急ブレーキを踏むと惰性で丸太が転がり落ちるのです。しかしこんな芸当はどんな場所でもできるわけでなし。そこで後楽園に沿った旭川の河川敷が唯一の荷下ろし場所となるのですが、ここの管理者が建設省の河川管理事務所。そのおっしゃるには今の時期は雨が多く出水期なので、むやみなものを河川敷に放置できず、降ろした丸太はその日のうちに撤収すること。
それゆえ丸太の山をワゴン車に人力で積み直し、保管場所となる植物園の裏手スペースに運びます。もっともここも広くはなく、それに浄化槽やら古い下水管があるとやらで、うかつに車両が踏み込む事も丸太を積み上げる事もできず、限られた場所に丁寧に丸太を積んで行かねばなりません。むろん人力で。
そしてここからがなんとも例えようのない作業。途中に階段があるため丸太を一本ずつ担いで設営場所までの150mを運ぶのです。一本30kg程の丸太を2千本。しかも設営場所周辺のスペースが限られているため、毎日毎日2、3人の者がすこしずつ肩に担いで行くしかないです。
レンガにしても一緒。これも11t車両2台分になり、やはり保管場所となる植物園の裏手スペースに搬入するためには、交通量は少ないとは言え道路を封鎖せねばならず、当然その調整から始まり始まり。
次にトラックから3百個のレンガが載ったパレット33台を降ろして運ぶ段になるのですが、うかつにも用意した輸送器具のローラーがレンガの重みで土面にはまり込んでいかんともしがたく、フォークリフトを急遽レンタルしてようやく移動。そしてそこから設営場所へは、またひたすら手運び。
こうしてやっとこさ作品となる素材が設営場所に供給されるわけです。そのためには延べ100人以上の人手が必要となりました。資材の荷下ろし場所、保管場所、設営場所がそれぞれ異なるうえ、重機が使えずただただ手運びしかなかったのが、この労働を生んだ要因。私は次々とやってくる資材をさばくために段取りに継ぐ段取り。そして自ら丸太を担いでのウォーキング。おかげでダイエットが進み、足腰に粘りが戻りました。ほんとに、もうこれで終わったような気分になるのですが、むろんこれで終わるわけでもなし。適宜運び込まれる資材を、毎日最低5人が國安さんを手伝いながらの作品化が始まります。しかし丸太は一日二百本も組み上げられれば上出来ですから、実際には22日間無休でようやく完成に至りました。
さて、作品化の部分は高所作業があったり、番線を巻くなどの技術も必要なため、長期間携われる人をバイト雇用しましたが、残る延べ150人分の作業を成し遂げたのはボランティアのスタッフでした。
今回はより多くの一般の方が当事者となって、このイベントに関わってもらう仕掛けとして、招待作家の作品にも参加型のプロジェクトを意図的に配したのみならず、アンデパンダン展の実施と、設営ボランティアの募集を行いました。
このアンデパンダン展と設営ボランティア募集は各々チラシを作り、抱き合わせで広報活動をしました。事前の予想ではアンデパンダン応募殺到、ボランティア四苦八苦だったのですが、蓋を開けるとまったくの逆。
100区画を用意したアンデパンダン展はせいぜい20区画が埋まっただけ。一方のボランティアは名乗りを挙げてくださった人の数で100名を越え、それも複数日活動が多いので、延べ300人を越える方が携わってくださいました。
その内訳は圧倒的に若い女性。下は高校生から30代前半まで。その次が定年過ぎた男性と男子学生が若干。40歳、50歳代については男女合わせてお一人がいらしただけでした。また特に美術に関心があるという方は少なく、かえって日頃、美術に縁がないという方が楽しそうに作業をしていたのが印象的でした。
それにしても、どこで知ったのかと私が言うのも不思議なほど、若い女性が集まった事実はなんなのでしょうか。日頃から社会のイニシアティブを40代〜60代の男性という限られた性別、年齢層が握っており、またまさにその層が美術・文化に対して、とんと理解がない状況に苛立ちきっていた私にとっては、こうして若い女性達が、それもファッションアイテムとしてではなくボランティアと言う形で現代美術に関心を示してくれた様を見ると、ぜひともこれからは女性こそが社会のイニシアティブを握って貰いたいと素直に思ってしまいました。
それにこうした若い女性達は休憩時間になると初めて合った者同士でもすぐにうち解けて楽しそうに会話を交わし、それに國安孝昌さんや眞板雅文さんと言った世界を相手に仕事をするアーティストと実に屈託なくあれこれ話をしているのです。すごい。とっても幸せな光景でした。
こうして出来上がったの國安さんの作品は写真のとおり。鳥取西部大地震の時には、池に張り出した部分で作業をしていましたが、作品はびくともせず。もちろん怪我人もなし。
さあ〜凄い展覧会出来上がりましたよ。見に来てね〜。
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ガーデン−現代美術をとおしてみる後楽園−
会場:後楽園園内[岡山県]
会期:2000年11月3日(金・祝)〜12月3日(日)
出品作家:池田晶一、岩野勝人、榎本勝彦、大久保英治、太田三郎、岡部玄、國安孝昌
地域と芸術計画、寺田武弘、藤本由起夫、眞板雅文
アンデパンダン展
会場:後楽園周辺河川敷
会期:2000年11月3日(金・祝)〜11月19日(日) |
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