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福島 木戸英行
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exhibitionせんだいメディアテーク開館記念イベント
メッセージ/ことばの扉をひらく「記憶の扉」

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ことばの扉をひらく「記憶の扉」
 1月26日から一般公開を始めた「せんだいメディアテーク」の開館記念展「記憶の扉」を見た。出品作家は、藤幡正樹、古橋悌二、徐冰などから、クワクボリョウタ、フクハラヒロシゲ、長谷川踏太といった、浅学にして初めて見る作家たちまで総勢15名(グループ)。作品は、数点の例外を除きほとんど観客参加型のインタラクティヴなデジタルアートである。とはいえ、たとえばNTT ICCが運営母体の潤沢な資金力と最先端テクノロジー企業のイメージを背景に、SFめいた非日常性を強調した演出を徹底していたとすれば、こちらは公民館的(artscape 2月号の鈴木明氏のテキスト参照)と言うのか、開放的で気取らない雰囲気がなんとも和ませてくれる展覧会だった。
 ところで、藤幡正樹の液晶プロジェクターで投影したバーチャルな本の作品や、徐冰の偽漢字の作品などが、まずは順当に人気を集めていたなかにあって、一人異彩を放っていたのは中ザワヒデキの「二九字二九行の文字座標型絵画第一番」だったようだ。蛍光灯が組み込まれたライトボックスに、漢字やひらがなを黒いカッティングシートでグリッド状に貼ったこの作品。コンピュータの文字コード表のような、やたら画数の多い漢字の配列の中に天地逆のひらがなが混じっているだけで、そこに意味のある文章は読み取れず、少し距離をおいて見てはじめて、画数の粗密が濃淡となって、オプアートよろしく錯視による空間があらわれるという、ただそれだけの仕掛けである(画面隅にちゃんと作家の署名があるところがご愛嬌)。
 中ザワが提唱する、一見馬鹿馬鹿しいけど実は非常にスリリングな“方法主義”とあわせて見れば、この人を食った無意味さも納得できるが、そうでない観客たちは、暗いブースの奥に1点だけ架けられた作品に一応は近づいても、5秒後には可哀想に、漫画によくあるように頭の上に?マークをいっぱいつけたまま、そそくさと踵を返して立ち去るしかない。中ザワ本人に責任はないだろうが、どちらかと言えば、難しいことを抜きに子供から大人まで参加して楽しめる、あるいは素直に感動できる類いの作品ばかりが並ぶ中で、このほとんど暴力的なまでのこの異質さは一体何なのだろう。ぼくはと言えば、その光景に反射的に痛快さを覚え、次の瞬間、そう思ってしまう自分に心が痛んだ。
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会場:せんだいメディアテーク  宮城県仙台市青葉区春日町2-1
会期:2001年1月26日(金)〜3月20日(祝)
出品作家:粟野ユミト、エキソニモ、淤見一秀、クワクボリョウタ、さかいれいしう+とやまたかひこ、徐冰、高谷史郎、中ザワヒデキ、長谷川踏太、原倫太郎、フクハラヒロシゲ、福本浩子、藤幡正樹、古橋太海、古橋悌二
開館時間:10:00〜20:00(入館は19:30まで)
入場料:一般800円/高大生500円/中学生以下無料
問い合わせ:Tel. 022-713-3171

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report学芸員レポート [CCGA現代グラフィックアートセンター]

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版画集への招待
 CCGAはまる2ヶ月間の冬期休館を終え、2001年最初の展覧会を3月1日からスタートさせた。内容は、「版画集への招待」と題して、館蔵の「タイラーグラフィックス・アーカイブコレクション」というアメリカ現代版画作品から、いわゆるポートフォリオ形式の作品だけを選んで紹介する所蔵品展だ。
 近年の作品サイズの大型化で、すっかり立派な会場芸術になってしまった版画の世界だが、自分の部屋で夜な夜な引出しから引っ張り出しては、一人ほくそえみつつ裸の作品を愛撫するのも版画の健全な楽しみ方の一つ。というので、観客にもそれを味わっていただく趣旨である。
 さすがに誰がくるかわからないギャラリーに、館にとっては貴重なコレクションを裸で置くわけにもいかず、一応は、各作品ごとに中身を数葉ずつ抜きだして額装し、残った作品と豪華な帙や畳紙は展示ケースに入れる展示方法をとる。しかし、それでは観客から欲求不満の声が出るのが明白なので、その代わりに、来館者の希望があれば、学芸スタッフ立ち会いで展示ケースから出した作品に直に触れられる、というサービスを行うことになった。
 これも交通アクセスのあまりの悪さに、来館者数が極端に少ないCCGAだからできるサービスである。それでも、全員からリクエストされたらこちらも仕事どころではなくなるから、あまり声高にアナウンスできない。ケースの隅にこっそり置いた案内プレートに運良く気がついた人だけの特典である。と言いながらこんなところに書いてしまっているが……。
 なお、このサービスは、学芸員不在の場合は勘弁していただくことになっているので、あらかじめご了承ください。
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版画集への招待:タイラーグラフィックス・アーカイブコレクション展Vol. 8
会場:CCGA現代グラフィックアートセンター  福島県須賀川市塩田宮田1
会期:2001年3月1日(木)〜5月13日(日)
開館:10:00〜17:00(入館は16:45まで)月曜、祝日の翌日休館(4月30日、5月1日は開館)
問い合わせ:Tel. 0248-79-4811

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