Sep. 24, 1996 | Oct. 8, 1996 |
Art Watch Index - Oct. 1, 1996
【心を癒す植物―アート・ボタニカル・ガーデン】 ………………● 宮迫千鶴
【《ヒニクなファンタジー 現代5人の想像世界》展】
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《心を癒す植物―アート・ボタニカル・ガーデン》
押江千衣子
中井川由季 日本園芸療法研究会 http://www.bekkoame.or.jp/ ~takasuna/index.html
目黒区美術館
中川佳宣
民族薬物資料館
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心を癒す植物 ●宮迫千鶴
「花や植物は沈黙の存在だ」と、アメリカの片田舎の老屋でひとり住みながら、研ぎ澄まされたエッセイを書いたメイ・サートンは記す。そして「それらは、耳のほかのあらゆる感覚に滋養をあたえる……」と書きながらも、さらに「聴覚さえ包含されるのかもしれない」と続ける。たしかに空気を浄化する作用として、食べ物や薬として、色やかたちの美しさとして、そして風にそよぐ音楽として、植物は私たちの五感を超えた癒しの力をもっており、そのことにいま私たちはとても敏感になっている。 眼と心と知性のための植物園
この夏、目黒区美術館で行なわれた《心を癒す植物―アート・ボタニカル・ガーデン》は、そういった魅力的な植物の存在と出会うためのさまざまなアート(感性の技術や知性の作法)がそれぞれの作家の個性に応じて表現されていて、植物好きにはとてもチャーミングな展覧会になっていた。
野生のエレガンスが香る「生薬」 どれも面白かったが、私はこの「生薬」の展示の美しさにみとれた。町の漢方薬の店先とは違って、ドライフラワーになった植物たちがじつに端正に並んでいて、そのガラスの中から野生のエレガンスが香りたってくるのである。いわばそれは「目で見る薬」であり、それは私の好きな魔女の力、薬草に深く通じている魔女の世界に通じていく扉であった。都市の片隅でこっそりと植物を自在に操る魔女になってみるのも悪くないな、と思いながら私はその部屋を出た。 [みやさこ ちづる/画家・エッセイスト]
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《ヒニクなファンタジー 現代5人の想像世界》
太郎千恵蔵
太郎千恵蔵
中野渡尉隆
中野渡尉隆
森万里子 Mariko Mori - Reference Page http://www.artincontext.com/ listings/pages/artist/ 2/4v5x1a12/menu.htm
Fine Magazine Feature:
MOTORCYCLE ONLINE
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《ヒニクなファンタジー ●椹木野衣
時代環境を反映した作品
本展の出品作家5名(村上隆、太郎千恵蔵、森万里子、中野渡尉隆、奈良美智)のうち、4人までが海外と日本を往復する制作活動を展開し、発表の機会も日本と海外とでなかばする。また、やはり5人のうち4人までが1960年代の生まれであるから、おのずと展示には、世代といって聞こえが悪ければ、日本のある時代環境を反映したものとなっている。 評価したい「自由さ」
彼らの作品を見ていると、戦後の日本という場所が、予想以上にハイブリッドでアナーキーな、そしてそれゆえにあらゆる外部と接続可能であるような自由さを持っているように感じられる。時には見るものを混乱させかねない彼らの活動や特徴、すなわち、頻繁に海外と日本を往復し、ハイカルチャーとサブカルチャーを複合させ、女性的要素と男性的要素を混在させ、民族性を横断するといった要素は、むしろそのような自由さという観点から積極的に見られるべきだろう。 [さわらぎ のい/美術評論家]
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Sep. 24, 1996 | Oct. 8, 1996 |