Sep. 17, 1996 | Oct. 1, 1996 |
Art Watch Index - Sep. 24, 1996
【純粋な「関係性」のダンス ─岩下徹と山田せつ子のデュオ】 ………………● 熊倉敬聡
【八谷和彦のアルス・エレクトロニカ・レポート 】
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《Improvisations 2》
岩下徹の即興ダンス
Butoh Dance | Sankaijuku http://www.bekkoame.or.jp/ ~kasait/butoh/butoh-e1.htm
巻上公一の『音楽なら極楽』
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純粋な「関係性」のダンス ●熊倉敬聡
意欲的なダンス・プログラムを続々と世に送り出している東京新宿のパークタワーホールが、今回は8月24日から28日にかけて5夜連続、 山海塾のダンサーでもある岩下徹の《Improvisations 2》を企画した。 関係性の生成へ 両サイドを観客で埋め尽くされた細長いスペースの両端で、2人のダンサーはバラバラに踊り始める。2人の間にはまったく「交感」がないかのようだ。しかも、観る我々も、ひとつの視野に2人を同時に収めることができないために、そこに「関係」を視覚的に措定することができない。そのような非関係的な場から、やがて踊る側にも観る側にも、「関係」の兆しのようなものが生成されてくる。<conjunction>と<disjunction>のあわいで、ダンスが踊られてゆく。そしてついに、2人は「出会う」。しかし、出会った後も、身体と身体の接触/非接触の狭間で、その狭間自体を微分するようにさまざまな仕種が展開されてゆく。それは純粋な「関係性」の踊りだ。いや、それは「関係性」そのもののドラマだ。 床を踊る と一転して、会場は暗闇に包まれ、ほの暗い中で、靴を床にたたきつける音が響く。今度は音だけのダンスと思いきや、やがて空間は明るさを取り戻し、岩下の足を股間に抱え込んだ山田が足の臭いを嗅ぐところが浮かび上がる。場内は笑いさざめく。そう、身体の関係性の現象学的探究ともいえる先ほどまでの踊りに対し、今度はユーモアをここかしこに散りばめての、「意味」の生成とフォルマリスムの間の戯れへと変奏されてゆく。しかも、西洋の舞踊にはまれな、「寝る」「座る」という、足の裏以外での身体の床への関わりを軸とした多彩な文法。ここでも、触れる/触れないという、他者への身体的接触に敏感な文化ならではの、身体所作の微妙な追究が行なわれる。 道具の再発見 すると、突然山田は、客席に座りにゆき、片足の靴を脱ぎ始める。それを岩下に贈り、今度はその靴という贈り物=道具をめぐってダンスが展開していく。舞台の美術・装置がますます「演劇的」になりつつある昨今の舞踊界にあって、この靴=ミニマルな装置は、我々に改めて「道具」の大切さ、しかもこの場合、2人のコミュニケーションにおける「道具」の大切さ、道具自体のメディア的多様さ・繊細さを再認識させる。<present=medium>となった靴をめぐり、あるいは激しくあるいは緩く、「やさしさ」の舞踊が、「いたわり」の舞踊が繰り広げられてゆく。しかし、それはぎりぎりのところで、「手話」という意味性に回収されることなく、あくまでデュオのダンスにとどまり続ける。そして、ダンサーどうしの、そして2人のダンサーから観客へのおじぎをもって、切ないほどにやさしさに満ちたこの純粋な関係性のダンスは終わってゆく。 [くまくら たかあき/フランス文学、現代芸術]
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アルス・エレクトロニカ・フェスティバル
ARS ELECTRONICA CENTER http://www.aec.at/
Masaki Fujihata Lab Home Page
The CAVE
Ars Electronica Festival 96 -CAVE Virtual Reality
NTT / InterCommunicationCenter
Christa Sommerer & Laurent Mignonneau
Survival Research Laboratories
ARTEC'95
Maywa Denki Home Page
Opera of the Future - Tod Machover
Silicon Graphics: SILICON SURF
八谷和彦の
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八谷和彦のアルス・エレクトロニカ・レポート ●八谷和彦
アルス・エレクトロニカ・センターの完成と言うこともあって、9/2〜9/6までの5日間で
開催された今年のアルス・エレクトロニカ・フェスティバル。 夜はSKY-FEARST FOR LINZという花火+ダンス+コスチューム+スライドショーのイベン トがありました。こちらは屋外で市電も止めてやっていたのですが、雨でたいへん寒 いにもかかわらず多くの人が来ていました。打ち上げではなく手持ちの花火で、しか もリンツの昔話(多分)をベースにしたダンスで、なんか僕はダンスと火薬とかそう いうテクノロジーの完成度のほうがすばらしいと感じたりしました。終わった後、ス タッフの女の子がボーイフレンドに肩を抱かれて感極まって泣いているところとかも ステキじゃないですか。 今年のインスタレーションは低調だ、という評判が多く、実際あまりインスタレーシ ョンは良くなかったです。インスタレーション部門の展示は古い美術館の中だったの ですが、やはり藤幡さんの展示が完成度も高く、内容もこなれています。他は安直だ ったり不親切だったり動いていなかったりして、イマイチ低調です。ただし美術館の 外で展示されていたものは結構面白く、例えばセンターの地下の駐車場で展示してい たNO MANS LANDという、MMMというかテクノクラート的なインスタレーションがスタ イルは古いものの結構面白く、また郊外の工場地帯でやっていたVOESTという工場地 帯のインスタレーションはSRLの学園祭版(笑)といった感じで古着屋やバーまであ りました。ぼくはあまりの寒さにジャケット3000円でかっちゃいました。そのな かのインスタレーションでは火の玉が左右に猛スピードで移動するヤツが結構気に入 りました。デザインセンター(幕張メッセや東京ビッグサイト的な展示場でした)の 中では etoy というWEB部門のグランプリ受賞者がインスタレーションしていました。 彼らは全員がオレンジのジャケットにティアドロップのサングラスにスキンヘッドと 半分ネオナチみたいな格好でかなり物議をかもしていたみたいですが、根はいいやつ みたい、というかもろ不良チーマーノリで、話していて結構楽しかったです。(http://www.etoy.com で彼らのウエッブが見れます)ちなみに視聴覚交換マシンもここでやってい たのですが、結構受けていました。何人かは今年のベストインスタレーション、とか 言ってくれました。「これはどういうコンピュータ使っているのか」とか聞かれたり もしましたが。個人的には車椅子の人(あとでウェッブ部門の審査委員だと知りまし たが)が体験して楽しんでいるの を見ることが出来たのが僕にとって貴重な体験でした。 で、本当はシンポジウムや他のイベントもいくつか開催されていたのですが、今年は 作家で来ているので作品に立ち会っていたこともあり、実際ほとんど見れませんでし た。特にシンポジウムは今年のテーマがMEMESISということもあり、リチャード・ド ーキンス博士が出席したこともあってかなり論議が白熱したみたいですが、それはま た別の人のレポートで読むことが出るでしょう。 全体的な感想としてはアルス・エレクトロニカ自体がかなり大きなイベントで(名古屋 のアーテックレベルかと思っていた)あることを来てはじめて実感しましたが、同時 に日本の作家、例えばテクノクラートや明和電機やヤノベケンジ氏の作品を初めて見 たときのようなインパクトは作品からほとんど感じられなかったこともあり(etoyを のぞく)、なんかもっと優れた作家は世の中にいっぱいいるんだろうな、とか日本の 作家ももっと出せばいいのに、とか思いました。あと、ケイブシステムや鳴りモノ入 りで発表されたトッド・マコーバーのブレインオペラの低調さに、やはりこの種のテク ノロジーアートの限界が見て取れるような気がします。「SO WHAT?(それで?)」 としかいいようのないものになりがちなのもテクノロジーアートの怖さで、作る立場 からすると、それは慎重に回避するしかない、としか言えません。ただ、ひとつ思っ たのはやはり技術先導型で作られたモノはそういったSO WHAT?型に陥りやすいので は(特にアメリカから来た作品にその傾向が強いような気がする)という仮説です。 個人的に先端技術使ったモノ(特にSGIのコンピュータ:インディとかつかったもの )ほどやはり内容が陳腐な印象が強かったからかもしれません。もうすでに、コンピ ュータを個人がフルパワーで使う時代は終わったのかもしれない、と考えたりもしま した。 [はちや かずひこ/アーティスト]
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