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ArtDiary ||| 村田 真のアート日記
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4月2日(木)

昼過ぎ、福岡へ。IAFの山野真吾氏と宮本初音ちゃんの招きで、「アーティスト・イン・レジデンスを考える」という講演。地味なテーマだが、今秋「ミュージアム・シティ福岡」でもアーティスト・イン・レジデンス(クソ長いので以下AIRに略)を導入するため関心が高いようだ。AIRの起源と今日的意味についてしゃべり、ヨーロッパと日本のAIRの実情をスライドで紹介した後、質疑応答。みんな熱心に聞いてくれた、と思いたい。
 終了後、例によって宴会。好物のゴマサバ(サバの刺身をゴマであえたもの。東京じゃ食えない)をはじめ、玄界灘の幸を堪能する。山野宅に投宿。

4月3日(金)

タイ出身のナウィン・ラワンチャイクンのビデオ・インスタレーションを見に、福岡市南西部の室住団地へ。この団地に住むナウィンが住民にインタビューした映像を屋外で流している。ナウィンを呼び出したものの、次の予定があってゆっくり話ができず、残念。
 初音ちゃんと落ち合って、田川のあをぎり旅館へ。明日、川俣正の「コールマイン田川」プロジェクトのパブリック・ディスカッション「炭鉱とアートIII」があり、今晩その打ち合わせをしなければならないのだ。実は、福岡に来た目的の4分の3はこのディスカッションで、昨日の講演は4分の1だった(この比率配分はギャラの多寡による……といっても、両者合わせて交通費に毛の生えた程度だが)。ディスカッションは、フランスの炭坑の町で生まれた映像作家のジル・クデールと、やはり北海道の炭鉱の町出身の川俣のふたりが主役で、炭鉱とは縁もゆかりもないぼくは司会。
 約束の7時前にあをぎりに着いたが、だれも来てない。8時頃ジルとその彼女のベティ、美術ジャーナリストのオリヴィエが到着したので、川俣不在のままディナーミーティングを始める。ようやく9時過ぎ川俣が来たが、ジルと川俣の間で話の主導権争いが延々と続き、明日のディスカッションが思いやられる。
 日付が変わろうという時いったんお開きにし、フランス人たちの希望でカラオケへ。初めは楽しく歌っていたが、そのうちマイクでテーブルを叩いて前衛音楽を始めたり、曲とは違う歌を歌ったり……。なるほど、カラオケを発明したのが日本人である理由がわかった。彼らにカラオケは必要ないのだ。それにしても、こいつらアホか。

4月4日(土)

午後1時半パブリック・ディスカッション開始。前半はジルの映像を見ながら、後半は会場からの質問を受けながら話を進める。昨晩しゃべりまくったせいか、ジルも川俣も発言は控えめで、なんとか無難にやりすごそうとする司会としてはほっとした。
 終わってから、場所をプロジェクト・サイトに移して花見会。結局、講演会やディスカッションのついでに飲むのか、飲むために講演会を開くのか、よくわからないのであった。

4月5日(日)

昨日早朝、田川に駆けつけてくれた山野氏と藤浩志氏の3人で福岡に戻る。飛行機は夕刻なので、それまで臨海の再開発地区シーサイドももちに設置された申明銀、椿昇らのパブリックアートを見てすごす。

4月10日(金)

夜10時頃、川俣とジル、ベティ、オリヴィエらが恵比寿で飲んでいるというので駆けつける。写真家の安斎重男氏やPHスタジオも来ていたが、川俣とジルは相変わらずディスカッションしていて、PHスタジオの3人はあきれて帰ってしまう。安斎さんはフランス語で茶々を入れたり手品を披露したりして気を逸らそうとするが、そのうちフランスの3人がマジで論争を始めたので、ほっといて飲みくさる。

4月12日(日)

愛する妻と「ビーン」を見る。帰ってから、珍しくアーロン・エルキンズの『偽りの名画』(ハヤカワ文庫)を読む。一方はコメディ映画、一方はミステリー小説だが、偶然にも共通する点が多い。
「ビーン」は、イギリスの美術館からアメリカの美術館に派遣された監視員のビーンが、1枚の名画を巡ってドタバタを繰り広げ、『偽りの名画』のほうは、アメリカの美術館からドイツに派遣された学芸員のノーグレンが、1枚の贋作を解明していくというストーリー。どちらも真贋をテーマに、美術館や学芸員の生態がおもしろおかしく克明に描かれている。とくに後者はフェルメール・マニアにおすすめ。いずれにせよ、美術館を舞台に学芸員が主役になるような映画や小説は、日本ではあまりお目にかかりませんね。日本じゃそれだけ美術館や学芸員に魅力がないってこと?

4月14日(火)

夕方、渋谷ゼクセルに中村哲也の作品搬入を見に行く。ゼクセルは自動車部品メーカーで、本社1階に展示スペースがあり、そこでぼくとPHスタジオの池田君と、たまきん(埼玉県立近代美術館)の松永氏の3人が交代で、年3回企画展を開いていくことになった。その第1回目がぼくの選んだ中村君なのだ。中村君は嬉しいことに「とんでもないもの」をつくってくれた。どんな「とんでもないもの」かって? ヒント「飛ばない」。まあ見てちょーだい。
 セッティングが一段落したところで、ル・デコの吉松哲夫展オープニングに顔を出してから、8時にXpへ。今日の用事はすべて渋谷だ。Xpでは今日から、山口裕美率いるトウキョウトラッシュのアートセミナーが始まり、ぼくはそのご意見番なんだそうだ。山口さんはゴーインだし、ぼくはユージューフダンなので、事態をよく把握しないままなんとなくそうなってしまったのだ。こないだおごってもらったし。山口さんは戦後日本の美術を2時間たらずでしゃべり倒した。スゲェー。

nmp net gallery スタジオ食堂
中村哲也
4月15日(水)

東京国立近代美術館の加山又造展、ワタリウムの岡本太郎と現代芸術大賞展、ギャラリーシマダのデイヴィッド・ハモンズ展、スパイラルのTAKEOペーパーショーを見る。圧巻はなんといってもデイヴィッド・ハモンズ。と、ペーパーショーの会田誠。
 そのあとゼクセルに寄ったら、「とんでもないもの」が「とんでもないこと」になっていた。すでに中村君も駆けつけていたので話を聞くと、夜中に台座が倒れて破損したらしい。幸い本体は大丈夫そうなので、部品だけ持ち帰って修理するという。台座? 本体? 部品? さあ、どんな作品でしょう?

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