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ArtDiary ||| 村田 真のアート日記
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4月17日(金)

「戦後日本のリアリズム」展を見に名古屋市美術館へ。特筆すべき展覧会である。敗戦の45年から60年までの16年間の作品を集めたものだが、出品点数は絵画を中心に400余点、それが企画展示室にぎっしりと、時に2段掛けで、しかも愚直なまでに年代に沿って展示されている。最初はムチャしよるなと思ったけど、見ていくうちにその過密ぶりが実は狙いだったことに気づく。まさに展示リアリズム。
 しかし400点もの作品を見終わったあとの印象は、奇妙にも単一のイメージでしかない。すなわち腐りかけのシュルレアリスムと、暗く濁った色彩の充満。極論すれば、岡本太郎ら2〜3の例外を除いて、ひとりの画家の個展だといわれてもさほど違和感を感じないくらいだ。日本人は基本的にリアリズムが苦手なのかしら?
 会場で島袋道浩君と会い、一緒にケンジタキギャラリーの戸谷成雄展を見る。これはすごい、ここまでやるか? とタマゲてたら、名古屋に飛ばされたばっかの刃物屋の伊藤伸之に会ってしまった。3人でNCAFに行く。「名古屋コンテンポラリーアートフェア」の略称で、「ンカフ」じゃなく「エヌカフ」と読む。NICAF(ニカフ)とかNIPAF(ニパフ)とか似たようなのが乱立してるが、NCAFが一番歴史が古い。けど、出展画廊も出品作品もてんでバラバラだし、会場も閑散としていて客より関係者のほうが多いくらいだ。
 札幌のリーセントギャラリーから出展している端聡(はた・さとし)君と、CCA北九州の第1期生の2人を誘って飲みに行き、ぴあ中部版デスクの「オッチー」こと落合博晃君を呼び出す。オッチーは以前、東京版の美術担当だったが、3年前に名古屋に移動。最近は××に××××せいか、××××にハマって××××××だそうだ。なはは。オッチー宅に泊まる。

《戦後日本のリアリズム1945-1960》
名古屋市美術館
名古屋市中区栄2-17-25 Tel.052-212-0001
1998年4月18日〜7月12日
4月21日(火)

この5月、蒲田駅近くにオープンする大田区役所新庁舎のアートプロジェクトを見に行く。圧巻は、ビルの3〜9階の吹き抜けに設置された逢坂卓郎氏のモビール「テクノコスモス」。大田区には町工場が多いので、工業製品の部品を寄付してもらい、それをワイヤーでつなげた作品。羽田空港が近いせいか、日航、全日空、日本エアシステムも競うように部品を提供、なかにはYS11のプロペラやジャンボジェットのレーダーカバーのような、マニア垂涎の品も。
 ひとつひとつは無機的な部品にすぎないし、それを単にぶら下げただけともいえるが、それが836個も並ぶさまは、まさに工業製品の銀河系。見ていて飽きないし、多くの地元企業や職人が関わってるし、なにより材料費がタダってとこが賢い。パブリックアートのひとつの手本ですね。

4月24日(金)

東京都現代美術館の森村泰昌展「空装美術館」オープニングへ。こんなに美術を、いや美術館を遊んだ作家もいないんじゃないか。やってくれますね森村氏も。最高傑作は「私の妹のために/シンディ・シャーマンに捧げる」でしょうか。帰りにメディア・デザイン研究所の佐野恵津子さんと一緒になり、バスで築地まで出て寿司をたかる。

4月26日(日)

また東京都現代美術館へ。今日は山出淳也氏の取材。山出氏は同館周辺の高齢者の家をたずね、「この窓からなにが見えるか? かつてなにが見えたか?」とインタビューし、その窓のピンボケ映像とインタビューの音声を美術館のロビーで流している。一見、エンタテインメントの森村と好対照だが、ふたりとも「愛」を口にする。愛も多様なのね。

5月5日(火)

ルーヴル美術館でコローの絵が盗まれたって。しかも白昼に。教訓は、最近の防犯システムだと夜間より人の多い開館中のほうが盗みやすいってこと。それより盗まれた作品の価値だが、朝日新聞では同サイズの絵の売却値から約1500万円としているのに、毎日新聞では2億円近くとなっている。10倍以上の開きがあるぜ。

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