ArtDiary
ArtDiary ||| 村田 真のアート日記
home
home
diary

7月25日(土)

『地域創造』の取材のため、「なぜ、これがアートなの?」の開かれている豊田市美術館へ。これは、MOMAで美術館教育プログラムを担当していたアメリア・アレナスの著書『なぜ、これがアートなの?』(福のり子訳、淡交社刊)に基づいた展覧会。
 まず展覧会を一巡して、アメリアの講演会を聞く。彼女のウワサは福さんや逢坂恵理子さんから聞いてたけど、本人のレクチャーに接して、なるほどウワサに違わぬパワフルな人だと納得。話の内容自体は本に書かれてあることと変わらないが、演台を無視して舞台をトラのように歩き回ったり、時に仁王立ちになって観客を睥睨しながら語りかけるなど、とにかくジェスチャーたっぷりユーモアたっぷりに、見せる(魅せる?)聞かせる(効かせる?)。
 講演会のあと、担当学芸員の都筑正敏氏にインタビューしてから、いったんホテルにチェックインして、再びアメリア、都筑氏、淡交社の藤元由記子さん、巡回先の川村記念美術館の林寿美さんたちと落ち合って食事。アメリアはこの数日間、ギャラリートークのボランティアのために毎日レクチャーばかりしていたという。美術館教育って宣教師みたいな仕事なんですね。

7月26日(日)

朝9時に、アメリアの泊まってるホテルのレストランでインタビュー。彼女は頭でっかちのアートは嫌いなようだが(作家名を言ったけど出せない。出したら「Kill you!!」と言われた)、知的なアートは評価しているようだ。つまり、ペダンチックなアートのためのアートではなく、社会的な広がりを感じさせるアートのことだ。たとえばソフィ・カルとか、ヘレン・チャドウィックとか……みんな女性作家だな。
 午後からボランティアによるギャラリートークを聞く……つもりだったのに、人が集まらないのでぼくがサクラになる。すると、人が集まってくる。アメリアのギャラリートークのコツは、こちらの知識や見方を客に押しつけるのではなく、客から意見や見方を引き出すことらしい。でも、ボランティアの人は客に「この絵、どう思います?」と聞くばっかりで、なかなか会話がキャッチボールしない。ギャラリートークも難しいもんだ。

7月29日(水)

東京国際フォーラムで、トヨタ・アートマネジメント講座「アートマネジメントの力」を聞く。といっても今回の東京会議は、今日が3つの分科会で明日が全体会議。そのうちぼくが聞いたのは、分科会1の「『参加型アート』のゆくえ」の後半だけ。分科会1は司会も含めて5人中4人が舞台芸術関係者で、美術は藤浩志ただひとりだったせいか、ともすれば舞台関係の重箱の隅をつつくような議論になりがちで、「参加型アート」の「ゆくえ」はわからずじまい。どうも美術と演劇では、「参加型アート」や「アートマネジメント」の捉え方が微妙にズレているような気もする。

7月31日(金)

ぴあ中部版の落合君と一緒に、藤浩志のトークを聞きに上野のコマンドNへ。藤君は、トヨタ・アートマネジメント講座で福岡から上京した“ついで”って感じなのか、ちょっと砕けすぎ。前半は集まった20人くらいの人たちに自己紹介させ、後半は思いつくままの思い出話。まあ、藤君のキャラクターと話のうまさで救われたけど。

8月4日(火)

BTの特集のため、川俣正にインタビュー。聞く側は編集長の伊藤氏、大林さん、池上さん、写真家の安斎さん、それにぼく。夜8時に中目黒のソバ屋でインタビューを始め、川俣の事務所に戻ってからもチビチビ飲みながら延々と続き、朝6時にいったん打ち切り。ちかれた。

8月5日(水)

明大前キッドアイラック・ホールにて、「アジア・パフォーマンス・アート連続展」。ご存じ、霜田誠二率いるNIPAFの主催だ。今日は6組出たけど、「アート」といえるのはリー・ウェンと霜田誠二だけ。
 ところで、霜田と川俣の2人はぼくの中でしばしば混同することがある。2人とも53年生まれ、霜田は長野出身、川俣は北海道出身なのでクマの血を引いているのか、どちらも大柄でガッチリした体格。ぼくが2人と知り合ってから約20年、霜田はパフォーマンス、川俣はインスタレーションの言葉とともにデビューし、どちらも80年代から海外を渡り歩くようになったアーティスト。だけど2人ともお金がないので、よく国際交流基金や芸術文化振興基金のお世話になってる。どちらも人に好かれ、リーダーシップがあり、話好き……と、共通点をあげていけばキリがない。
 でも、この2人をともによく知ってる人はぼく以外にあまりいないし、2人が出会ったのも87年のドクメンタ8の時だけらしいので、この話には説得力がない。ジャンジャン。

8月8日(土)

栃木県立美術館の「石原友明展」オープニングへ。なんか久々に真っ当な展覧会を見たって気がした。もちろんそれは石原友明が真っ当な作家だからなんだけど、そんな真っ当な作家の個展を美術館がやらない/やれない/やる気がないことに問題がある。

8月10日(月)

川俣正へのインタビューの続き。今日は4時間、両日合わせて14時間。そんなテープ、だれが聞くんだ? あ、ぼくだ。ゲー。

……前号アート日記
……次号アート日記

top
review目次review feature目次feature interview目次interview photo gallery目次photo gallery





Copyright (c) Dai Nippon Printing Co., Ltd. 1998