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ArtDiary ||| 村田 真のアート日記
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7月4日(土)

東京国際フォーラムの「フィリップモリスアートアワード1998」へ。絵画あり写真あり立体ありビデオアートありのなんでもあり。パルコとソニーとVOCA展が一緒になったみたいなアナーキーさだ。さすがに1400点余りから選ばれた100点だけあって、思いつきの図画工作の類は少ないものの、いったい審査員はなにを基準に選んでるんだか、知りたいものだ。

7月7日(火)

ニューヨーク在住のCGアーティスト板垣由雄氏が、新作を携えて仕事場に来る。去年に続いて2度目の訪問だが、今回は「フィリップモリスアートアワード」出品のために来日したとのこと。そういえば、バーチャル空間と観光記念写真を合成したCG作品が最終審査で入選してたっけ。狙いはいいんだけど、もうひとひねりというか、もっと明確なメッセージ性がないと単なる面白主義のパロディ写真で終わってしまう、てなことを話す。

7月9日(木)

東京都現代美術館の「建築の20世紀」展オープニングへ。美術館に着いたのが5時ちょっと過ぎで、閉館まで1時間もない。建築展は実物が並ぶわけではないので、設計図やマケットを読み込まなくてはならない上、今回は企画展示室を全部使っているので、とうてい見切れない。結局1フロア残して追い出されてしまったが、もう1度ここに足を運ぶことを考えるとウンザリする。まあ、5800円(消費税込み)もする分厚いカタログをもらっただけでもよしとしなければ。
 浅草に出てウンコビルへ。毎年アサヒビールの企業文化部が開いてる七夕パーティーがあるのだ。建築展でも会ったナンジョウ&アソシエイツの児島やよいちゃんや、写真家の安斎重男さん、スタジオ食堂の中村哲也君も来ている。中村君は昨年メセナ賞のトロフィをデザインしたから、その縁で呼ばれたんだろう。このパーティー、なにかパフォーマンスをやれば会費3000円がタダになる仕組みだが、彼もそれ狙い。で、中村君の披露したパフォーマンスとは……。

7月11日(土)

立川のスタジオ食堂で、昨年5月のリニューアル以来の活動報告があるという。立川駅からタクシーを拾ったが、運ちゃんにスタ食への道を教えているうち、その運ちゃんが絵描きで、タクシーはバイトだということがわかった。降りる時「ちょっと見ていったら」と誘うと、嬉しそうにスタジオやギャラリーをのぞいていった。スタ食の連中もこういう出会いを楽しんでるみたい。久々に牧歌的な気分。
 報告会にはメンバーも含めて約20人が参加。一昨日会った安斎さんや中村君の顔も。スタ食からの報告のあと、ビールを飲みながらディスカッション。このように仲間と一緒に活動の場を持てるというのは、うらやましくもあるけど大変そうでもある。遅れてやって来たレントゲンの池内氏のクルマに同乗させてもらって帰宅。

7月12日(日)

参院選に投票してから、千葉県立美術館の「浅井忠展」と千葉市美術館の「東山魁夷展」を見に行く。はっきりいって千葉は文化度が低い。たとえば、県美の最寄り駅は「千葉みなと」だが、駅構内にも改札を出ても、展覧会のポスターも美術館の案内もない。ようやく隅っこのほうに小さな地図を見つけたものの、道すがら美術館への表示は電信柱にたったひとつあるだけ。まるで「来ないでくれ」とでもいいたげなノーサービスだ。
 県美自体も20〜30年前にタイムスリップしたかのような風情だが、それはさておく。その県美から市美へはアシがないのでタクシーを使ったが、両館とも人気展を開いているのだから、シャトルバスでも出したらもっと人が来るだろうに。
 市美では7階で企画展を開いているのに、いったん8階まで昇ってチケットを買い、また降りなくてはならない。見終わってもう1度8階に昇り、常設展に入ろうとチケットを提示したら、ごテーネーに裏返して日付の確認までする。使い回しを禁ずるのはわかるけど、わざわざ別の日付のチケットを持ってきてまで常設展を見たいという人なら、それは熱心かつ貧乏な千葉市民のはずだし、どうせ入場者の少ない常設展なのだから入れてやってもいいではないか。
 要するにお役所仕事なのである。一つひとつは小さいことだが、だからこそちょっと気を利かせればよくなることなのに。その小さな差に文化度というものが表れるのだ。文句ばかり書いたけど、いいこともあった。県美でカタログを買った時、売り子のおばちゃんがニコニコと何度も頭を下げてくれたこと。カタログ買っただけでこんなに感謝されたのは初めて。おそらくボランティアだろう。千葉で希望の星は、ボランティアのおばちゃんだけか……。

7月22日(水)

今日も懲りずに近郊の美術館へ。まず、タマキン(埼玉県立近代美術館)の「わくわく!どきどき!サマー・ミュージアム!!」。モネ、ピカソ、デルヴォーといったタマキンの目玉コレクションをさりげなく導入口としながら、インドのミティラー絵画やパプアニューギニアの仮面などの民俗芸術、子どもの作品、現代美術を織り交ぜて、自由に物語を紡ぎ出せるように仕立て上げている。学芸員の苦心のあとがうかがえますな。それにしてもタイトルに!マークが多すぎるぞ、テレビの番組欄じゃあるまいに。
 次、宇都宮美術館の「アート/生態系」へ。埼玉から宇都宮ならそう遠くないと思ったら大間違い。イナカの交通機関はあなどれない。「アート/生態系」は、70代の土谷武から30代の丸山直文まで幅広い作家の人選だが、菅木志雄、戸谷成雄、遠藤利克らもの派とポストもの派に力点が置かれてるように見える。実際、この展覧会は68年から70年代のポイエーシス(制作)の問題(それは谷新館長の引きずってる問題なんだけど)を顕在化させることが目的。「生態系」というのはコジツケくさい。
 東京に戻って、スパイラルの「G9」オープニングへ。これは9人の若手ギャラリストによるチビッコ・アートフェア。画商も9人寄ればなんとやらで、すごい人。でも、あんまり売れてないみたい。

7月23日(木)

『美術手帖』10月号特集(まだヒミツ)のため、編集長の伊藤憲夫、新人の大林有子と一緒に、写真家の安斎重男さんの自宅にうかがう。おーあるある、70年以降の現代美術の記録写真がどっちゃりと。写真だけじゃない。サム・フランシスやらアンソニー・カロやらの小品が家中ところ狭しと飾ってある。みんなもらいもんだそうだ。やっぱ人柄ですな。
 夕方、浅草橋から屋形船に乗る。宮島達男の「日本現代芸術振興賞」受賞を祝う会なのだ。こんな賞があったとは知らなかったけど、過去に原美術館の原館長や佐賀町エキジビット・スペースの小池一子さんも受賞してるという。その原さんや小池さんをはじめ、大阪から森村泰昌氏も駆けつけ、計25人ほど。お台場に出てからさっそくカラオケ大会。チャキチャキの下町っ子の宮島氏にはいかにもピッタリな舞台だった。

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