feature
feature ||| 特集
home
home

村田vs名古屋対談
ドクメンタ 作品ガイド

ドクメンタ10
村田:全体的な感想を……。
名古屋:戦後美術の概念化の歩みを振り返ってみたという感じでしたね。とにかく、絵画とか彫刻とか、そういう作品がほとんどなかったですしね。
村田:うん。だけども、展覧会としては非常に統一感があって、これまでの総花的なドクメンタじゃなくて、すごく絞り込んだという意味では、好感をもちました。
名古屋:ええ。
村田:ただ、実際に、面白い作品がそんなになかった。
名古屋:それが泣き所ですね。ただやっぱりこれは、芸術監督の毅然とした主張が功を奏した……とはいえやはり、作品が面白くなければどうしようもない、ということも同時に証明してしまったと思うんですね。
村田:そうだね。やっぱり展覧会っていうのは、キュレーターの考えが全体に浸透していなくちゃいけない反面、実際の評価は作品にかかってくるわけだから、そういう意味じゃ、つまんない作品ばっかり集めて統一感もたしても、だめだなっていうことだね。
名古屋:なるほど。まあ、ヴェネツィアの対極を示したということかな。
村田:そうそう、そういう感じがすごくしますね。チェラントのまったく逆(記者会見場の写真を見ながら)満員ですね。この、アンニュイなカトリーヌの態度が、僕は好きですけれども。
名古屋:私も、ほれ込んでしまいましたよ(笑)。
村田:アンニュイで投げやりな(笑)……。
名古屋:これでタバコでも吹かしたら似合いそうですね。
村田:そうそう。「ぼうや、こっちおいで」みたいな。
名古屋:さて、作品に移ると……やはり、中心はマルセル・ブロータースと(ゲアハルト・)リヒターということで、場所もすごくいい所を与えられていました。でも、それにもまして、入口の所にナイジェリアの作家のビデオが置いてあるというのが暗示的で、ようするにあれは、「アフリカ人でもビデオを使えば、ちゃんとこういう所に連れてきてあげるんだよ」というメッセージだったような気もするんですね。
村田:なるほどな。さすがフランスですね。
名古屋:教育的指導……(笑)。「土やら、木の枝やら使わずに、ちゃんとビデオを使いなさい」という、有無を言わせぬメッセージだったような……ほんとに、白人以外の作家というのは、このナイジェリアの人と、中国系のマシュー・グイっていうシンガポールの人と、それからフォン・マンボという中国人、私が見た限りではこの3人だけでした。3人とも写真かビデオ、またはコンピュータを使う人で……。
村田:徹底してますね。今回はいつにも増して、屋外作品が少なかったですね。まあ、駅を使っているのと、駅からずうっと延びている道を使っている以外は、美術館の中に閉じこもっていた。
名古屋:これは、アートのパブリック化といいますか、まあミュンスターに象徴されるような、そういうものに対するひとつのアンチテーゼなのかどうか、だとしたら、よほどひねくれた人みたいですねえ。
村田:うん。やっぱり、今世紀最後のドクメンタだということをすごく意識していて、それでこれまでのドクメンタに対する批判的な視点っていうものがずいぶんあったような気がしますねえ。それをまあ、これだけ実現させたっていうのは、すごいことだと思いますねえ。
名古屋:なるほど。
村田:この、オイティシカは……。
名古屋:ええ、この人は、前々回のサンパウロ・ビエンナーレでも大特集をやっていまして……。
村田:まだ生きてんの?
名古屋:いや、もう死んでいますね。80年ごろ亡くなったんじゃないですか。そういえば、その時のサンパウロ・ビエンナーレに、ダヴィッドはフランスのコミッショナーとして来ていました。彼女はブラジルの現代美術にも非常に詳しいようで……。
村田:(ダヴィッドの経歴を見ながら)ああそうか、スペイン語とポルトガル語を専攻していた。
名古屋:ブラジルに留学していたという説もありますね。
村田:ああ、1992年、ジュ・ド・ポームでのオイティシカの展覧会やっているんだ。
名古屋:ええ。相当な思い入れがありますね。まったく、そういう意味では個人的な思い入れが前面に出てしまったドクメンタ、ということですね。まあ、これもひとつの、国際展のありかたと言っていいのかどうか……今回、日本人は結局ひとりも出品しなかったということですね。
村田:そうですね。
名古屋:にもかかわらず、あんなにいっぱい日本人がオープニングに来るとは、日本人とはなんと勉強熱心な国民だろうか、と。
村田:そういうこというと、反発食らうよ。
名古屋・村田:苦笑
村田:  だけど、ヴェネツィアもドクメンタも、けっこう日本人以外のアジア人が来始めたね、韓国あたりかなあ。これまではあんまり見かけなかったけれども。
名古屋:そうですね。
村田:韓国が光州ビエンナーレを始めて、それからヴェネツィアにパビリオン持ってからなんだろうなあ。このコンテナ作家、ヴェネツィアにも出してたなあ。
名古屋:そうですね。
村田:これ、結局、ウンコの山なんでしょ。鉄板の。この奥に箱があって……。
名古屋:頭を突っ込む……。
村田:……と、そこが便器になっている。便器から頭を出すというかたちになっている。
名古屋:あっ、そうなんですか。
村田:だからこれは、ウンコの山。コンテナ全体で、便槽になっている。
名古屋:そう言われてみれば、非常にそれらしいですねえ。そうとは知らずに、喜んで歩き回ったり、頭出していましたよ(笑)。ヴェネツィアでは、頭を出したらお菓子みたいなものがありました。
村田:(線路の草を指して)これも作品だそうですよ。誰かが植えたそうですねえ。誰の作品かわかんねえなあ。
名古屋:その、ペンペン草、作品ですか、本当に。
村田:作品だって言ってたよ。
名古屋:かつがれてたりして(笑)。
村田:そういうの、けっこうあるからなあ。これも(駅前の自動車の展示を指して)最初はハーケの作品だっていってたヤツがいるから。ハーケはこれ、なんだっけ?
名古屋:これは要するに、いろんな大企業の社長が文化支援について語ったコメントを引用してポスターに仕立てたもので……。
村田:1つの企業じゃないんだよな。
名古屋:ええ。いろんな企業。「金を出す者が支配する」なんていう文句が見えますけれども。かなり皮肉っぽい……。
村田:あと、リヒター
名古屋:「アトラス」ですね。
村田:僕はリヒター好きだからすごくうれしかったですね、これは。けれど、リヒター知らない人がみたら、面白くもなんともないんじゃないかと思うね。
名古屋:これは……。
村田:カトリーヌ人形じゃない?
名古屋:あっ、これは見なかった。残念だ。
村田:いっしょけんめい盛り上げようとしていたけど、なんか盛り下がってたよ(笑)……あれ、これだけだ(写真)。ドクメンタはあまり撮ってないなあ……映像の作品が多かったせいもあるけど。
名古屋:ドクメンタ、今回はこうしたコンセプチュアル・アートに関心がない人なら、1日あれば全部見られてしまう気がするんですけれど。
村田:そうですねえ。あと昔の作品がずいぶん出てたねえ。60年代、70年代の。
名古屋:回顧的でもある。(文中敬称略)
ヴェネツィア/ ミュンスター/ 国際展総括
写真スクラップ
写真スクラップ・ブック
カトリーヌ人形
カトリーヌ人形
マルセル・ブロータース
マルセル・ブロータース
ゲアハルト・リヒター
ゲアハルト・リヒター
マシュー・グイ
マシュー・グイ
オイティシカ
オイティシカ
ウンコの山
ウンコの山
ゲアハルト・リヒター
ゲアハルト・リヒター
カトリーヌ人形
カトリーヌ人形

top
国際展目次国際展特集review目次review interview目次interview photo gallery目次photo gallery





Copyright (c) Dai Nippon Printing Co., Ltd. 1997