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村田vs名古屋対談
ヴェネツィア 作品ガイド

ヴェネツィア



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村田:ヴェネツィアはどうだった?
名古屋:前回、前々回と比べると、ハイライトに欠けるという印象だったんですが、いかがですか?
村田:なんかあらかじめ、ヴェネツィアのほうは来年に延期するという話が伝わってきてた。ところがいきなり去年の暮れになってやっぱり今年やるという話になったんで、最初からあまり期待してなかったですね。
名古屋:ほう。
村田:半年ちょっとしか準備期間がないんで、まあ、たいして期待してなかった、という期待は裏切られなかった(笑)。
名古屋:しかし、やはりビエンナーレというからには、アーティストや、コミッショナーになるキュレーターにとっても重要な発表の機会で、一般の美術ファンも楽しみにしていたんではないかと思います。多くの美術ファンの期待を裏切る結果であったといっても言い過ぎではないということでしょうか?
村田:そう。
名古屋・村田:苦笑
村田:まずその、全体的なテーマがないでしょ、今回。
名古屋:そうですね。まあ一応、チェラント個人の企画展にはありましたけれども、なんかテーマというのも、従来、どれだけ有機的に機能してきたかは非常に疑問で、むしろ今回みたいにテーマがなくてもビエンナーレらしい形になってしまうということが、逆に証明されたんじゃないかという気がします。さて、ではパビリオンの話から始めますか。今回、結果的にフランス館が、ファブリス・イベールのあのわけのわからないインスタレーションで賞を取ってしまいましたが。
村田:あれ、賞取ったんだっけ?
名古屋:ええ、国別賞を。で、一説によると、内藤礼が相当悔しがっていたという……。
村田:あ、ほんとに。
名古屋:ええ(笑)。
村田:なんかみんな、多くの国があまり力を入れてなかったという印象があるんですけどね。
名古屋:力入れてたのは日本ぐらい、あ、そうでもないか。
村田:そうでもない(笑)。どこも力も金もかけていないような感じがしたんですよ。
名古屋:前回のアメリカ館やフランス館のような存在がなく、パビリオンで精彩を欠くので、全体の印象がうら寂しいものになってしまった。
村田:あと、なんか映像関係が多かったですね、いつになく。企画展のほうも含めて。ビデオとか、多かったですね。
名古屋: そうですか。
村田:暗い中に一定時間押し込めて見せるという形式が。これはヴェネツィアだけじゃなくてドクメンタもそうだったし、「彫刻プロジェクト」と呼んでいるミュンスターでさえそうだったわけで、これはまあ、近年の傾向なのかもしれないですね。それっていうのは、やっぱりこういう国際展が一種のお祭り騒ぎのようになって、見に行く人もあんまり作品見ないようになったから、どうにかして目を惹こうという、作品を見ることの持続を保証させるために映像にしたんじゃないか、と思えてくるわけですね。
名古屋:なんか、勘繰りたくなってしまう。そういう傾向の中で出てきたのが、今回の日本館の、南條さんの“作戦”だったわけですけれども、結果的にあれは一定の効果を上げたと評価していいんでしょうか。なかには専門家でも見そこなったという人もいるようですが。
村田:ただ、お祭り騒ぎに終始する国際展に疑問を投げかけた、問題提起をしたという点では評価できると思うんですね。とは思うけれども、そのことがほんとに、オープニングに来た人に伝わったんだろうか、どうかなという……。
名古屋:むしろ、オープニングの時にはフラストレーションばかり高まっていたようですけれど……今ごろなら、当初の目的を達しているんじゃないかと思うんですが。作品自体はいかがでしたか? あ、そうだ、先生は……。
村田:見てないんですね、ここでは。長時間並ぶの嫌だから。
名古屋:じゃ、私の感想を言いますと、そうですね、ああいうビエンナーレの雰囲気のなかでは特異な空間をつくっていたと思います。ただ、私の知り合いの、ある若いヨーロッパ人の美術ジャーナリストは首を傾げていて、「あの作品は仏教に関係があるのか」という、やや的外れな質問をしていまして。
村田:ほう。
名古屋:村田先生がおっしゃったように、趣旨はわかるが、本当にそれが伝わったかどうかはちょっとこころもとないという、例によって日本の作品展示のパターンを繰り返したと思います。
村田:それは、中をのぞいただけなの? 
名古屋:そうですね、テントの入口から中をのぞいたんです。
村田:中に入れなかったの? 
名古屋:ヴェルニサージュの時は別として、オープニングの時にはもう、内藤さんはいなかったわけですから……。
村田:うーむ。
名古屋:そういう意味ではちょっと、まあフランクフルトの展覧会を抱えていてやむをえなかったのかもしれませんけれども、やはりビエンナーレに力が入っていないなと思わせる、ひとつの例だったのでは、といわざるをえませんね。
村田:あの作品は中に入って作品を体験することで完結するものだから、そういう意味じゃ、本人がいなければ中にすら入れないというのでは、やっぱり問題ありますねえ!
名古屋:まず初めに「内藤さん」ということがあって、いやそれよりも、まず初めに「参加」ということがあって、で、ほかに代案もなく、しかたなく内藤さんを引っ張ってきたという気もしないではないですけれども……。



村田:個々のパビリオンにいきましょうか。
名古屋:個人的には、今回一番充実した展示だと思えたのは、イギリス館のレイチェル・ホワイトリードだったんですね。やはり作品自体の力といいますか、雰囲気的になんとなく内藤さんの作品に通じるような、まあ、形式も内容も全然違いますけれども、もの静かで求心性をもった彫刻作品で、これなんかもそれこそ、1人ずつ3分間とか制限して見せたらますます効果が上がったような気がしますが、そんなことはしないで普通の見せかたをした。それでも十分印象的な作品だったわけで、要するに作品が良ければ、妙な演出をしなくても、たとえ2秒しか見ないとしても、作品が良ければ100回ぐらい繰り返して見るわけですから……。
村田:イギリス館はなぜか、いつも良く見える。僕もホワイトリードは好きなんですけれども、なんかアイディア勝負という気がしますね。
名古屋:私は純粋に彫刻として見たんですが。例えばこの本棚の作品なんか……。
村田:ネガティブな空間をポジティブに見せるという。最初はそれだけで面白かったんですが、このごろは、「なんかつくったら?」という……。
名古屋:そういう作家、いますね。
村田:まあ、ほかにいいのがなかった。
名古屋:そういうことかもしれませんね(笑)。
村田:あとはどうですかね。(文中敬称略)
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フランス館入り口付近
フランス館入り口付近
レイチェル・ホワイトリード
レイチェル・ホワイトリード
レイチェル・ホワイトリード

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