――オスカールさんご自身はどのような作家、作品から影響を受けているとお感じですか。 10代のころ3回続けてサンパウロ・ビエンナーレで下働きのようなことをしたときに、日本から出展していた吉沢美香さん、舟越桂さん、川俣正さんの仕事を見たり、手伝ったりしました。キース・ヘリングやフランク・ステラ、アンセルム・キーファーなどが会場をうろうろとしていた頃です。当時はあまり意識をしていませんでしたが、いま思うと凄いメンバーがいましたね。僕自身世界を回って展覧会を行ないたいという気持ちは強くありましたから、場の雰囲気には影響を受けました。ですから、作家としてどんな人々に影響を受けたかということになると、その場で出会い、日本の窓口のように感じた吉沢さんなどからは、アーティストとしてどうやっていくかというようなことの影響を受けたかもしれません。 テーマはいろいろとあります。しかし、僕の作品はアメリカなどで流行っているポリティカル・アートではないし、エコロジカル・アートでもないと思っています。ただこの世の中にいる小さな存在としての感覚から、20世紀、現代社会とかかわる個人的な見方のなかで何か創造的なことは生まれないかということが作品のヒントになっています。一番のテーマは人間と自然がどうかかわっていくかということですが、例えば『黒い雪』という作品は、単純に言えば寒い国は白い雪、暑い国は黒い雪というアイディアで、サンパウロの街外れの風景を描いているんですが、日本で描きながらも頭の中にあるフィルターを通したイメージを使っています。と同時にこの黒い雪は銃痕、ピストル犯罪の多いサンパウロのイメージでもあります。しかし、かといって何もポリティカル・アートを描いているのではありません。そういうものは使いやすく、使われやすいものですが、そうではなく僕の個人の経験から描いています。
Interview ||| インタヴュー
home
artist
大岩オスカール幸男
現代美術製作所オープン 展示作品
戦後移民としてブラジルに渡った両親のもとで、アメリカから入ってくるテレビ番組や日本のアニメに触れて育った大岩オスカール幸男。ブラジルにいた頃から制作を始め、建築を学ぶ学生として日本に留学してからは、夜と土日を制作活動にあててグループ展や個展を開いてきた。東京、東向島に自ら設計し、オープンしたばかりの「現代美術製作所」で個展を開く彼に、今回の作品と影響を受けた作品、アーティストについて聞いてみた。
作品ということで言えばマンガですね。子供の頃は子供なりのマンガ研究家でしたから(笑)。ブラジルのマンガもそうですが、アメリカの『スーパーマン』とか『マーヴェル・コミックス』なんかはよく見ました。それから『タンタン』とか『アステリックス』は高校時代に好きでしたね。大学時代は映画をたくさん観ました。当時好きだったのはドイツのヴェルナー・ヘルツォークの作品でした。東京に国際映画祭があるように、サンパウロでも映画フェスティヴァルがあって、よく観ましたね。
20代になって実際に動き出して、2年前にイギリスに留学したんですが、テート・ギャラリーやナショナル・ギャラリーで15世紀くらいからの素晴らしい油絵を観て油絵がやりたくなり、ペインターと言いつつ30歳になってはじめて油を使うことになるんです。その前提はやはり、いい美術館があって、安い画材屋さんがあって、スタジオが確保できてということになりますが。その前はもっとハードな、スプレーやペンキのようなものを使っていました。これからも油は使っていきますね。やはりアクリルより油のほうが可能性というか、何百年の歴史と技術の積み重ねがありますから。レンブラントなどを観ると油の使い方が勉強になります。
――オスカールさんの作品にはストーリー性を強く感じますが、それは先程おっしゃられたブラジルのハイブリッドな環境、マンガへの興味などが関係しているのでしょうか。またそのストーリーは政治性さえ感じさせるのですが、日頃強く意識をされているテーマのようなものはありますか。
たまに「オスカールの絵にはユーモアがある」といわれますが、それはマンガからくるんじゃないかなと思います。いまではマンガはたまに描くくらいですね。この間、台湾のエドワード・ヤン監督の『カップルズ』という映画のカタログに2ページのキャラクター・マンガを描きましたが、普通はあまりないことですね。
大岩オスカール幸男
現代美術製作所
『Black Snow(黒い雪)』(2.2m×3.3m、キャンバスに油彩、1997年)
「これはピストルの弾の痕を意識して……」(MPEG: 706K)
「個人的なファンという人はいないですね……」(MPEG:878K)
大岩オスカール幸男ホームページ
http://www.bekkoame.or.jp/i/oscar/
コミック・アート関連サイト
Comic Art & Grafix Gallery
http://www.comic-art.com/index2.htm
DCコミックス(DC Comics)
http://www.dccomics.com/
マーヴェル・ユニヴァース(Marvel Universe)
http://www.marvelonline.com/
大岩オスカール幸男《VIA CRUCIS》展−PartI
会場:現代美術製作所
会期:1997年10月25日(土)〜12月20日(土)
12:00〜19:00(月・火および祝日は休み)
問い合わせ: Tel.03-5630-3216現代美術製作所
大岩オスカール幸男《Luz no final do tunel》展
会場:スタジオ食堂
会期:1997年11月23日(日)〜1998年1月18日(日)
15:00〜21:00(金・土・日のみオープン)
問い合わせ: Tel.0425-38-7128スタジオ食堂
top
interview feature review photo gallery
Copyright (c) Dai Nippon Printing Co., Ltd. 1997