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海外レポート
シカゴ・アート・フェア1998
シカゴ
ミシガン湖に面した広大な会場(手前)
市原研太郎
ート・シーンはめまぐるしく移り変わる。最近ではほとんど年ごとに、その相貌を変えていく。アート・フェアも同様だ。今年5月8日から12日にかけてシカゴで開かれたアート・フェアの第一印象は、昨年と比較して、興味深い企画や飛び抜けて目立つ新たな動向に出会うことのないやや期待外れのものだった。とはいえ、これで6回目となるフェアの会場、ミシガン湖に面したネイヴィ・ピアの突端に位置する広大なホールには、世界中から200以上のギャラリーが集まり、アメリカでもっとも成功しているアート・フェアといわれるイヴェントを、多種多彩な作品で飾り立て盛り上げている。20世紀のモダンアートの歴史を作り上げてきた、キュビスム、ロシア・アヴァンギャルド、表現主義、戦後の抽象表現主義、ミニマル、ポップなどの作品が所狭しと並べられ、さながら20世紀アートの回顧展の観を呈し、また、アートのメインストリームにあるものだけでなく、プリミティヴやフォーク、そしてアフリカンやラテンなどマイナーな特色を強く打ち出すギャラリーもあって、幅広く多様性に富む表現の宝庫を見ているかのようである。観客は、この広い会場のどこかに、自分の趣味に合う場所を必ず見つけることができるだろう。

Art 1998 Chicago
http://artchicago.com


会場入口
会場入口

しかしながら、今回のフェアをざっと見渡して物足りなさが残ったのは、次のような状況に起因していることは間違いない。まず、ここ数年来のアメリカ経済の隆盛を背景にして、ディーラーがこれを絶好のチャンスと判断し売りに出たこと。したがって現代アートを扱う、とりわけ大手のギャラリーは、一般の評価がすでに固まり、また大衆の嗜好に迎合するものを中心にブースを構成し、冒険的なと思われる作品の展示を差し控えていた。また、90年代に入って一元化された世界のなかで、暗黙のうちに共通のイデオロギーが人々に定着し、とくにアートのマーケットが丸見えになるこのような見本市では、それを反映する作品が過半数を占めたこと、である。つまり、適度に欲望を満足させてくれる作品が圧倒的に好まれるということだ。
 ところで、もう少し細かくフェアの会場を見ていくなかで、気づいたことがあった。現代アートの新たな方向づけをしてきた重要なギャラリーのいくつかが今回参加していない(インテリム、ニコライ・ワルナー)。また、ニューヨークのアート・フェア(新進のギャラリーだけが集まったフェア)とぶつかったために、シカゴに出さないディーラーがあった(パット・ハーン、アメリカン・ファイン・アート)。さらに、ニューヨークのギャラリー街がソホーからチェルシーへ移動しつつあり、その移転の時期と重なってやむなく不参加となったギャラリーがある(ルーリング・オーガスティン、アンドレア・ローゼン)。これだけの数が欠けていれば、注目に値する刺激的な作品に出会う機会が減るのも仕方なかろう。
会場風景1
会場風景
会場風景2
会場風景(2階より)

前回のフェアでは、ニューヨークやロサンジェルスで開かれてきた前述の現代アートのフェアが、話題性はあったものの経済的に行き詰まり、それに参加していたギャラリーのいくつかがシカゴへと回ってフェアを活気づけた。それらは、現代アートの新たなテーマ(日常生活、セクシュアリティ、世紀末)を際立ったかたちで示したのだ。それに対して今回は、現代アートをめぐるテーマのトレンドが、いわば種切れで小康状態にあり、またこれらのトレンドも、フェアの全体の穏健ムードのなかに紛れて見えにくくなっている。こうした印象が先行してはいたが、その特徴をはっきりさせしているギャラリーが光っていたと思う。名前をあげておこう。303、ボエスキー、CRG、ブラム・アンド・ポー、フレイ、クリンジンガー、ヴァロワ、フューチャー、フリードマン、そしてタカ・イシイ、小山登美夫。
小山
小山登美夫ギャラリー
タカ・イシイ
タカ・イシイ・ギャラリー
ポー画廊
ブラム・アンド・ポー画廊

1997年8月7日号
小山登美夫ギャラリー「東京アート・フィールド-1」
微気候の生成、あるいはスペシフィケーションの問題……槻橋 修


1997年10月2日号
タカ・イシイ・ギャラリー「東京アート・フィールド-3」
「わたしの東京」のアート……槻橋 修
Art 1998 Chicago
会場:シカゴ、ネイヴィ・ピア
会期:1998年5月8日〜5月12日
問い合わせ:Tel.312.587.3300 Fax.312.587.3304
eメールThomas Blackman Associates:info@artchicago.com

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