2020年07月01日号
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キュレーターズノート

飛び出せ!!Made in 九州展 ~九州でアートするということ~/琴姫プロジェクト~九州アートを探す旅~/全員展in九州

坂本顕子(熊本市現代美術館)

2009年01月15日号

 若い作家たちが「九州でアートする」ということは、どういうことか。その活動の拠点となるオルタナティブなアートスペースやアートプロジェクトについて考えさせられる展覧会に出会った。

 福岡を代表するアートスペースが、博多リバレインの中にあるギャラリーアートリエだ。同所は、九州を代表する老舗アートプロジェクト、ミュージアム・シティ・プロジェクト(MCP)が、福岡市文化芸術振興財団より委託を受けて運営しているスペースである。このMCPは、九州のアートスペースの情報収集にも力を入れている。2007年に福岡県立美術館で行なわれた「アートの現場・福岡 Vol. 21福岡アートフェア・シミュレーションα(fafa)」で集められた情報をベースにした、宮本初音(MCP事務局長、オハツ企画代表)のテキストは、現在の九州のオルタナティブなアートシーンをもっとも網羅しているといえる★1。

 このアートリエで11月に行なわれた「飛び出せ!!Made in 九州展 ~九州でアートするということ~」は、ともに20代の美術家である浦田琴恵と城野敬志がゲストキュレーターとして企画した若手作家の展覧会だ。同時に、企画者の浦田自身が「篤姫」ならぬ「琴姫」に扮して、隠れた九州のアートスペースを実際にめぐる「琴姫プロジェクト~九州アートを探す旅~」と、その道中で出会った作家たちに声をかけ、佐賀のAMPギャラリーで行なったアンデパンダン展「全員展in九州」も同時に開催された。

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左:福岡・ギャラリーアートリエでの「Made in 九州展~九州でアートするということ~」
右:佐賀・AMPギャラリーでの「全員展 in 九州」

 ふたつの展覧会のうち、佐賀での「全員展」には、会田誠や藤浩志といったベテランも出品しているが、「九州展」と「全員展」での若手作家たちの作品は、総じてまだまだ成長途中、という印象であった。アンデパンダンという方法ゆえの水準のばらつきや、作品管理などのマネジメントに課題を残した。だが、そのなかで注目したいのが、鹿児島から福岡までの7県の30以上のアートスペースや関連施設を、13日間をかけて巡る浦田の「琴姫プロジェクト」だ。その軌跡は、現在も琴姫ブログで見ることができる。同じ九州に住んでいながら、その活動を知ることのなかったアーティストやアートスペースを、ペイントを施したど派手な軽自動車で、巡礼のように一つひとつめぐる。名所旧跡、ご当地グルメなども挟みながら、その出会いを携帯からリアルタイム更新していく。そこで心に響くのは、携帯カメラの粗い画素のむこうに輝く、それぞれのアートスペースを守る人々の笑顔やその姿である。同じ九州にこんなにもアートに関わる人たちがいるのか、という温かな思いや勇気に満たされ、ぜひそれぞれの人たちに会いに足を運んで見たいと思わせるのだ。

 2008年も最後になって暗いニュースが次々と飛び込んできた。地方の美術界の慢性的な不況は変わりないが、多くの若い作家たちが、不安定な身分や低収入、発表の場や反応の薄さに悩み、制作をやめてしまったり、より良い環境を求めて、活動拠点を首都圏や関西圏に持つ状況は加速している。アートバブルに沸く東京とそれ以外の地方都市の埋めがたい格差に心を折ることなく、たとえささやかであっても、「アートすること」を続けていってほしい。2009年も微力ながらそれらの活動をサポートしていければと思う。

★1──宮本初音「二十一世紀の九州アート プロローグ 九州のアート拠点」(『LR Returns』16、pp.31-35)。MCPによるギャラリーアートリエの企画運営は2009年2月をもって終了する。

●「飛び出せ!!Made in 九州展 ~九州でアートするということ~」
会場:ギャラリーアートリエ
福岡県福岡市博多区下川端3-1 博多リバレインB2/Tel.092-281-0081
会期:2008年10月11日(土)~11月30日(日) 

●「全員展in九州」
会場:AMPギャラリー
佐賀県神埼郡吉野ヶ里町松隈1257-1 /Tel.0952-20-1482
会期:2008年11月9日(日)~11月15日(土)

●「琴姫ブログ

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