キュレーターズノート

飛び出せ!!Made in 九州展 ~九州でアートするということ~/琴姫プロジェクト~九州アートを探す旅~/全員展in九州

坂本顕子(熊本市現代美術館)

2009年01月15日号

学芸員レポート

 翻って、「熊本でアートする」状況はどうか。前出の宮本のテキストでも「熊本と宮崎は他県に比べると若い世代の活動がわかりづらい」と指摘されたが、それに応答するかたちで補足しておきたい。熊本のアートスペースの歴史を遡ってみると、その原型は意外に古いところに認められる。1960年~70年代の熊本の文化をリードしていたのが、「山脈」「セルパン」に代表される「画廊喫茶」だ。画家や小説家、音楽家や舞踏家、新聞記者といった地元の文化の発信者とサポーターたちが集い、資金を集めて、企画展や画家の留学支援など、全国的にも注目される質の高い文化支援活動を行なっていた。

 これらの活動を第一世代とすると、世代交代というかたちで、ようやく第二世代といえるオルタナティブな活動の兆しがみえてきた。そこで注目したいのが、雑貨店や書店、カフェ、ギャラリースペースを持つorangeだ。詩人の伊藤比呂美を隊長とする熊本文学隊の拠点であり、谷川俊太郎など日本を代表する作家を招いた企画などを精力的に仕掛けている。また、美術に関しては、去る12月7日に行なわれた河原町文化祭では、日比野克彦らを審査員に迎えた作品コンペのほか、みかんぐみの曽我部昌史によるトークなどもあわせて行なわれ、安定した活動を行なっている。これらをとおして痛感するのは、ゆるやかな連帯の必要性である。オーディエンスの限られる地方都市では、文学や音楽、演劇といった隣接する他ジャンルと互いにパイを奪い合うのではなく、広い意味での文化のサポーターを育てていく視点を共有することがその鍵となるのではないか。

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左:河原町文化祭・日比野.JPG
右:みかんぐみ・曽我部昌史のトークも行なわれた

Orange
熊本県熊本市新市街6-22/Tel.096-355-1276

熊本文学隊

●河原町文化祭(河原町文化開発研究所