キュレーターズノート
小島一郎:北を撮る──高橋しげみインタビュー
日沼禎子(国際芸術センター青森)
2009年04月01日号
3月中旬にさしかかっても、この地では突然、吹雪がやってくる日がある。インタビューの後、小島の見た風景を探したくて津軽平野へ車を走らせた。見渡す限りの雪の平原。しかし、その下に眠る大地のぬくもり。やがて春が来て、雪解けともに豊かな実りをもたらすこの地。津軽を代表する芸術家として、あまりにも有名な太宰治の小説『津軽』には、故郷への愛憎が織り交ぜられている。小島一郎も然り、ここに暮らす人々はそうした思いを抱き続けきた。しかし、高橋は、こうした「荒地のカタルシス」★1へ身を預けることの危険性を指摘する。それは浄化であり激しい自己吐露。辺境の神話を自ら作り上げながら、退路を余儀なくされる時が来ることも覚悟しながら、普遍性への希求、その昇華へと孤独な闘いを続ける表現者たち。その心情は、光と影、白と黒となり、自らに突きつけられる。私には、企画者である高橋にも、その姿がはっきりと重なって見てとれる。自らの故郷にあって、荒地を歩き始めている表現者の一人に他ならないのだと。
★1──『小島一郎写真集成』(青森県立美術館 監修、インスクリプト、2008)
小島一郎:北を撮る──戦後の青森が生んだ写真界の「ミレー」
会場:青森県立美術館
青森市安田字近野185/Tel.017-783-3000
会期:2009年1月10日(土)〜3月8日(日)
シンポジウム「小島一郎と北の写真」
パネリスト:露口啓二(写真家・札幌市在住)、豊島重之(ICANOFキュレイター)
モデレーター:高橋しげみ(青森県立美術館学芸員)
日時:2009年1月10日(土)、13:00〜14:00
シンポジウム議事録:http://www.aomori-museum.jp/exhibition/22/symposium_document.pdf
特別上映会+トーク「撮る場所、生きる場所」
パネリスト:小原真史(映像作家)、北島敬三(写真家)、高橋しげみ(青森県立美術館学芸員)
モデレーター:豊島重之(ICANOFキュレイター)
日時:2009年1月10日(土)、[上映会]14:15〜15:46/[トーク]16:00〜17:00
トーク議事録:http://www.aomori-museum.jp/exhibition/22/talk_document.pdf