キュレーターズノート

京芸Transmit Program#1 「きょう・せい」/レゾナンス 共鳴──人と響き合うアート
会田誠《滝の絵》公開制作

中井康之(国立国際美術館)

2010年06月15日号

 同時期に、サントリーミュージアム[天保山]で開催される事実上最後の現代美術展となる展覧会「レゾナンス」が開催されていた。昨年、「インシデンタル・アフェアーズ」展で同館で始めて本格的に現代美術の企画展を実施し、予想以上に集客があり、それがシリーズ化して続く筈であったが、母体となっている企業側の都合によって、この展覧会で打ち止めとなる。前回同様、現代美術の紹介という基本的な枠組みによってマーク・ロスコやアンゼルム・キーファーのようなすでに古典的ともいえる作家から、近年、日本でも人気のあるマルレーネ・デュマスを経てライアン・ガンダーのコンセプチュアル・アート、そして若い世代では伊藤彩に至るまで、幅広い鑑賞者層に多くの窓口を用意した展覧会を構成していた。私にとっての窓口はジャネット・カーディフだった。そこに展示されていた《40声のモテット》は、昨年の春、銀座メゾン・エルメスでも紹介されていた作品である。オーディオ装置によって立体的に再現される宗教音楽の合唱を体感するというカーディフの本来の意図からすれば、おそらくは今回のサントリーの展示施設のような海を広く見渡せるような空間は望ましいものではなかったかもしれない。しかしながら、エルメスで体験した、奇妙に耳だけを研ぎ澄まさせてその音場空間を感じ取ろうとまじめに鑑賞していたときとは異なる感覚を持てたことも、また事実であった。なにより、太陽光が燦々と照りつけるという美術館施設にとって暴力的と感じていたこの空間が、展示を行なうという本来の役割を初めて果たしているという事実も、見る者にとっては大きな糧と感じられたのである。


ジャジャネット・カーディフ《40声のモテット》
The Forty Part Motet、トマス・タリス作曲 Spem in Alium Nunquam habui, 1573による、2001

Sung by Salisbury Cathedral Choir
Recording and Postproduction by SoundMoves
Edited by George Bures Miller
Produced by Field Art Projects
Forty Part Motet by Janet Cardiff was originally produced by Field Art
Projects with the Arts Council of England, Canada House, the Salisbury
Festival and Salisbury Cathedral Choir, BALTIC Gateshead, The New Art
Gallery Walsall, and the NOW Festival Nottingham.

京芸Transmit Program#1 「きょう・せい」

会場:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
京都市中京区油小路通御池押小路町238-1/Tel. 075-334-2204
会期:[第1期]2010年4月2日(金)〜25日(日)
   [第2期]2010年5月1日(土)〜30日(日)

レゾナンス 共鳴──人と響き合うアート

会場:サントリーミュージアム[天保山]
大阪市港区海岸通1-5-10/Tel. 06-6577-0001
会期:2010年4月3日(土)〜6月20日(日)

学芸員レポート

 現在、今年の1月〜4月に開催した「絵画の庭──ゼロ年代日本の地平から」に出品された、会田誠の《滝の絵》を完成すべく、作者による公開制作(6月8日(火)〜20日(日)まで)が行なわれている。写真は先日、三潴氏が来館された際の光景である。一見、やらせのように見えるがそうではない。これも会田の絵の力が為せる業なのだろうか。


会田誠《滝の絵》公開制作
撮影=三潴末雄

会田誠《滝の絵》公開制作

会場:国立国際美術館 地下2階展示場
大阪府大阪市北区中之島4丁目2-55/Tel. 06-6447-4680
会期:[展示期間]2010年4月17日(土)〜6月27日(日)
   [公開制作]2010年6月8日(火)〜20日(日)

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