アート・アーカイブ探求

酒井抱一《夏秋草図屏風》江戸の風趣──「岡野智子」

影山幸一

2012年08月15日号

酒井抱一《夏秋草図屏風》江戸時代・1821(文政4)年頃, 紙本銀地著色, 二曲一双, 各縦164.5×横181.8cm,
重要文化財, 東京国立博物館蔵
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冷たい感触

 立秋を過ぎても暑い夏が続いている。ロンドンオリンピックが終盤に入り、甲子園の高校野球が始まった。今夏、体温を超える猛暑のなかでトライしたのが、ゴーヤーのグリーンカーテン。6つの苗は、ベランダで20日間、高さ2メートルほどに育ち、小さなゴーヤーが実っている。窓の向こうに伸びる蔓と葉の間から木洩れ日が入り、葉が微妙に揺れて目に涼やかだ。さらに脳内環境を低温にするべく涼しい絵を思い浮かべた。
 酒井抱一の《夏秋草図屏風》(東京国立博物館蔵)が浮かんできた。銀色の絵として冷たい感触とともに、描かれた野草からは風を感じる。控えめだが凛とした植物、その生命力が広い余白一杯に満ちている。酒井抱一の名作として残されてきた。抱一研究家として知られる細見美術館上席研究員の岡野智子氏(以下、岡野氏)にこの《夏秋草図屏風》の見方を伺いたいと思った。
 江戸琳派の優品を所蔵する京都・細見美術館へ向かった。


岡野智子氏

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