アート・アーカイブ探求
加藤 泉《無題》──今ここにいる遠い私「島 敦彦」
影山幸一
2013年01月15日号
源流
プリミティヴ・アートか、と思った単純化された人型は宇宙人にも見えるが、原始人にも見える。密林の木々の間から、あるいは砂漠の遠いところからこちらを見詰めているような加藤泉の作品は、現代性がありながら原初的だ。
加藤の作品は年々成長していくように変化しており、2012年霧島アートの森で開催された個展のポスターになった作品は、心に残る美しい色味と不気味さの微妙なバランスがきれいだが、これからもまた変わり続けるのだろう。その進化している作品のなかでひとつの到達点、または源流と見えたのが2006年に制作された3枚組の《無題》(国立国際美術館蔵)である。3.11の大震災と福島原発事故があったためか、「原点へ回帰せよ」とのメッセージにも受け取れ、また成長の限界が見えてきた社会では、自然とのつながりという普遍的なテーマにも感じられる。
変遷する加藤作品を長年見てきている大阪の国立国際美術館の島敦彦学芸課長(以下、島氏)に《無題》の見方を伺いたいと思った。島氏は、私が行きたかったグループ展「絵画の庭──ゼロ年代日本の地平から」(2010)の企画者でもあった。また展覧会図録では加藤作品について述べており、新聞の連載記事では度々加藤の作品について論じている。仕事納めの日も近い年の瀬、大阪へ向かうことになった。