アート・アーカイブ探求
作者不明《日月山水図屏風》循環する宇宙のエネルギー──「髙岸 輝」
影山幸一
2011年03月15日号
津波
「3.11」TSUNAMI。この先日本列島はどのようになっていくのだろう。千年に一度の自然災害に直面した。2011年3月11日14時46分、マグニチュード9.0という世界最大級の地震が東北地方太平洋沖に発生してしまった。失ったものの大きさを想像した。ただちにミュージアムの被害情報及び救済情報を集めて共有するサイト「savemuseum @ウィキ─東日本大地震によるミュージアムの被災情報・救援情報」が立ち上がった。地震による美術館の休館情報などが寄せられている。人命を第一優先とし、作品や文化財の損害が最小限になることを祈る。こんな事態にアートは何ができるのだろうか。時代を予測できるアートは決して無力ではないはずだ。
今回選んだ絵画は、大阪の天野山(あまのさん)金剛寺が所蔵する、作者不明の重要文化財《日月山水図屏風(じつげつさんすいずびょうぶ)》である。モダンな山容に、洗練された波頭の一風変わった絵で、目を引きつけた。純一化された山の姿と、緑と白の発色が斬新で、500年ほど前の作品とは思えないほど現代的なのだ。ダイナミックで美しい作品と、「3.11」前には思っていたが、こんなことになると、美しい山野をのみ込む津波にも見えてきてしまう。
室町時代に制作されたといわれるこの古典名画を若手研究者はどのようにとらえているのだろうか。日本美術史が専門で『室町王権と絵画』(京都大学学術出版会)の著者である髙岸輝氏(たかぎし・あきら。以下、髙岸氏)に「3.11」以前に伺った。