ミュージアムIT情報

価値生成をめざすアーキテクチャの実験

須之内元洋2009年03月01日号

 twitterでつぶやく 

時間×ユーザ=札幌のいま

 では、SAPPORO COLORの特徴を、情報が編集される流れに沿ってご紹介させていただく。まず、地域の目利きの人(現在は10人程であるが将来的には広げていきたい)がウェブを巡回して、SAPPORO COLORに引用したいイベント情報が掲載されているウェブページをブラウザで開くことから始まる。イベント情報のページが表示されている状態で、情報引用のためのブックマークレット★4を呼び出し、イベントの情報をフォームに入力(半自動化されている)するとともに、任意のウェブページの画面キャプチャ画像をスクウェアに切り取って、当該イベント情報のサムネイルとして登録する。見方によっては、完全に現行の著作権制度に反するものであるが、サービスが提供するのはあくまで既存情報への参照と目次であり、イベント情報と画面キャプチャ画像の引用元を必ず併記すること、イベント情報や画面キャプチャ画像の引用によって不利益を被る対象が想像し難いこと、モラルある引用(というしかない……)を心がけ、クリエイティブコモンズや利用許諾の枠組みが利用できる場合には積極的に利用すること、イベント情報や画面キャプチャ画像の削除依頼に対しては迅速な対応を行なうこと、をもってすれば社会的に成立するのではないかという仮定にたっている。そもそも、ウェブは分散型の巨大なデータベースのコモンズであり、一般に閲覧可能なあらゆる情報は参照(おもにリンク)によって複雑に紐づいていて、検索エンジンやソーシャルブックマーク、ある種のブログなどは、既存情報への参照と引用によって成立しているメディアである。幾重にも積み重なった過去の参照と引用の結果が現在のウェブの有り様であるともいえる。


2──画面キャプチャとスクウェアサムネイルのクロップ画面

 このようにしてサービスに引用された個々のイベント情報は、ランキング、カレンダー、地図というフォーマットで一般のユーザに公開される。ユーザは、ランキングで人気のイベントをチェックしたり、カレンダーで週末のイベントをチェックしたり、どこが盛り上がっているのかを地図上でチェックしたりすることができる。また、いわゆるソーシャルブックマークサービスと同様の手法を用い、イベント情報の閲覧、ブックマーク、コメント、オススメといった、ユーザの自発的な操作を根拠としてイベントが評価され、その状況をフラットに共有する。その結果、サイトのコンテントは時間の経過とユーザの操作によって常に変化し、あたかもその時々の札幌の色に見えてくる。必要に迫られなくても天気予報をチェックするのと同じような感覚で、人々が札幌の街の様子を定期的にチェックしにくるような性格のメディアへ成長すればと願っている。


3──SAPPORO COLORのカレンダー

★4──ブックマークレット(Bookmarklet):ブックマーク(お気に入り)にJavascriptで記述されたプログラム文字列を登録することでなんらかの機能を持たせる仕組み。ブックマークからウェブページを開くのと同じ感覚で、ウェブにまつわる特定の動作を実行することができる。

▲ページの先頭へ

須之内元洋

1977年生。メディア環境学、メディアデザイン。札幌市立大学デザイン学部助教。 international & interd...

2009年03月01日号の
ミュージアムIT情報

  • 価値生成をめざすアーキテクチャの実験