展示の現場

最適な照明、光をつくり出す:岡安泉

白坂由里2009年01月15日号

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組み合わせるだけではなく、つくり出すこと

 美術館やギャラリーの展示照明は、少ない選択肢のなかで組み替え、ケースにより特殊な対応を行なうというのが現状かもしれない(その差はさまざまだが)。光の質を決めるのは、照度(明るさ)、色温度(日の出から日の入りまでの光を基準とした色み)、演色性(色の再現性)の組み合わせのバランス。しかし、美術館やギャラリーが所有する器具は限られている。白という色、または白い空間でものの色彩を適正に見せることを考えた場合、電球色では、黄みのある白になってしまうため、演色性が高く、ある程度紫外線もカットできる美術館用蛍光灯を使う、また、保存の面から、熱量の弱い蛍光灯で全体を明るくしたり、ハロゲンランプのスポットライトは壁に拡散させたりといった解に落ち着くのだと思われる。明順応や暗順応など、人間の眼の順応性に頼っている面もある。
 「LEDやプロジェクターなどが発達し、コストがもっと下がれば、あと5年くらいで、光源が自在になり、劇的に変わると思います」と岡安は言う。LEDは演色性が高く、自在に大光量がつくれ、調光もできる。寿命も長い。熱が放射されないので、保存と演出の両面を可能にする。現在一部の美術館で導入されつつあり、さらに広まるだろう。
 ただし、単にテクノロジーの発達に頼るだけではない。岡安は、光をどう照らすかといった仕事とは別に、光の質を追究し、光をデザインする作品も発表している。電球の組成が理解できれば、基本的に照明を自身でつくることは可能だという。特に、舞台照明は、照射時間が短いため、さまざまな実験を行なっていて参考になるそうだ。
 「照明デザインとは、基本的なシステムのなかで器具を組み替えて使うことではなく、光をつくることだと思います」という岡安の言葉は示唆的だ。

08-Kareidoscope.jpg岡安泉「カ・レ・イド・スコープ」展(2007年12月22日~2008年1月26日、happa)万華鏡の原理を利用し、三角形の鏡の代わりに、LEDを仕込んだ透明なアクリルの三角柱を、高低差や角度を付けて空間に散りばめるように吊り下げる。エアコンの風で光が揺れ、壁に光と影が映る。筒は、見る場所により透けて見えなくなる。
 

PROFILE

岡安泉 Izumi Okayasu
1972年生。1994年、日本大学農獣医学部を卒業し、生物系特定産業技術研究推進機構に勤務。1999年、アイティーエルに入社、照明技術に携わる。2003年、super robotに参加。2005 年にismi design officeを設立。2007年に岡安泉照明設計事務所に改称。主な仕事に、ルイ・ヴィトン京都大丸店のファサード、美容室「afloat-f」(設計:永山祐子建築設計)やNadiff a/p/a/r/tの空間照明、隈研吾建築設計事務所「casa umbrella」(ミラノトリエンナーレ2008)の展示照明、反射鏡付きハロゲンランプ、ピンホールダウンライトはじめ照明・展示用器具のプロダクトなど。http://www.ismidesign.com/

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白坂由里

『ぴあ』編集部を経て、アートライター。『美術手帖』『マリソル』『SPUR』などに執筆。共著に『別冊太陽 ディック・ブルーナ』(平凡社、201...

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