会期:2024/03/29~2024/04/26
会場:N&A Art SITE[東京都]
公式サイト:https://nanjo.com/nanjo_selection_vol_3_ri_jongok/

ゴツゴツの岩に囲まれた洞窟を鉛筆で丁寧に写生した線描画がある。ほぼ輪郭線だけで克明に描写したものだ。隣には、それを拡大コピーして中央に女性像を置き、頭の後ろに後光のように赤い円を加えた絵。そのコピーから女性像の輪郭に沿って風景を切り抜いた作品もある。この3点が1セットになっている。

同様に、波打ち際の巨岩と、荒野のなかの枯れ木を緻密に描き、空を淡彩で塗った線描画、それらの拡大コピーの中央に女性像を配した図、その女性像を切り抜いたもの、が3点1組ずつ並んでいる。つまり3点1組が3セット、計9点あるということだ。もう1点、火口湖と思われるほとりに帽子を被った男性像を描いた作品もあるが、これはセットではなく1点だけ。この風景はその形状から白頭山と思われる。


展示風景[写真提供:N&A Art SITE]

はて、これらはなにを表わしているのだろう。洞窟や巨岩は神話を想起させるが、その前に女性を置くことで人間と自然との対比を表わしているのかもしれないし、実像と虚像についての実存的な問いかけのようにも感じられる。調べてみたら、それぞれ日本、韓国、北朝鮮の神話および建国の物語を表わしているという。確かに最初の1点は天岩戸の神話だろう。また、韓国には日と月の精である夫婦が海岸の大きな岩に乗って日本に渡ったところ、新羅に光がなくなったため、ふたりは絹を送り、それを天に祀ると光が戻ったという伝説があるらしい。日韓の神話に共通するのは「日が隠れ、再び戻る」ということだ。ちなみに北朝鮮を建国した金日成の名前も、「日に成る人」という意味でつけられた渾名だという。これがタイトルの「三つのくにづくり」の「アナロジー」だろう。

モデルの女性は、日本に生まれ、韓国にルーツを持ち、朝鮮総連に属する作者自身だそうだ。まさに彼女にしか描けないテーマであるが、そこに強い説得力を持たせているのが驚異的な描写力だ。最初の線描による人物のいない風景画だけでも、十分に神話性を漂わせている。

関連レビュー

李晶玉「記号の国」|村田真:artscapeレビュー(2021年07月01日号)

鑑賞日:2024/04/18(木)