塚田優｜「ニッポン制服クロニクル」（前編）

会場：弥生美術館［東京都］
会期：2025/06/07～2025/09/14
公式サイト：https://www.yayoi-yumeji-museum.jp/yayoi/exhibition/past_detail.html?id=2720

弥生美術館はこれまで「制服」を主題とした展覧会を、過去に二度にわたって企画している。最初は2018年に開催された「セーラー服と女学生～イラストと服飾資料で解き明かす、その秘密～」展、その次が翌年開催された「ニッポン制服百年史──女学生服がポップカルチャーになった！」である。両者ともにイラストレーション、マンガなど広く視覚表現で取り上げられてきた制服と、ファッションという風俗的関心を組み合わせた展覧会だ。

カタログやインターネット上の情報を参照すると、前者は19世紀半ばのイギリス海軍の水兵服だったセーラー服が日本において女学生の制服として定着した様を、中村佑介らの原画とともに展示したもの。後者は日本で初めて洋装の女学生服が導入されてちょうど100年のタイミングで開催され、主に女学生服の歴史的変遷に焦点をあてプレゼンテーションがなされている。

「ニッポン制服クロニクル」展示風景［以下すべて提供：弥生美術館］

そしてこの度、制服シリーズの第3弾として企画されたのが「ニッポン制服クロニクル──昭和100年！着こなしの変遷と、これからの学生服」である。同展はこれまでのフォーマットを踏襲しながらも、ツッパリやスケバン、コギャルや腰パンといった特異なスタイルに焦点をあて、さらに時代に合わせ変化する制服の現在地についても紹介することで、同時代的な多様性も意識させる構成となっていた。

同館の制服シリーズはこれまで女性の着る制服に比重が置かれていたが、「ニッポン制服クロニクル」はそれに比較して男子学生服に関する展示も多かった。ここで目を惹くのはやはり学ランの上着を長くしたり、短くしたりし、ズボンも極端に幅が広いものを着用するツッパリだろう。スカートを長くする女学生のスケバンとあわせてマネキンが展示されており、それらが管理教育に対する学生たちのアクションであることが説明されている。

1990年代をピークに流行したコギャルや腰パンでは、ツッパリ、スケバンのような衣服への直接的な加工や変形服ではなく、着崩しが主流になっていく。そしてこのセクションでは学生のファッションとして強い印象を残した「ヤマンバ」についても紹介されている。ここではヤマンバギャル文化をテーマに制作をする画家の近藤智美の作品が展示された。彼女の絵画には「限界まで焼いた肌にアフリカ仮面のような化粧と、派手な髪色★1」のヤマンバが描かれており、その振り切った美学の前衛性が強調されている。