1月16日に、オーストラリアを拠点とする建築家・研究者の土岐文乃さんによる寄稿記事「環境とコミュニティ──オーストラリアのブッシュケアとシティファーム」を公開しました。「【ブリスベン】多文化の波にゆれる都市」(2023年10月掲載)や「サバーバン・クリーク・ランドスケープ──水とともに暮らす都市、オーストラリア・ブリスベンとローガン」(2024年10月掲載)に続く、オーストラリアからの現地レポートとなります。
都市と自然、環境と人との関係を見つめるこれらの記事は、速報性や商業的な話題性とは異なるかたちで、メディアが担う「定点観測」としての役割を改めて意識させてくれるものです。昨年、アーティゾン美術館で開催された「彼女たちのアボリジナル・アート オーストラリア現代美術」のように、日本国内の人々のオーストラリアへの関心が高まる機会に、作品や作家だけでなく、その背後にある土地の環境や風土のリアリティへと想像を広げるための参照点として、こうした寄稿記事が皆さんの目に触れることを願っています。なお、土岐さんの寄稿は来年も予定されていますので、ぜひ楽しみにしていただければと思います。
土岐文乃さんの寄稿記事(著者紹介ページ)
国内外を問わず、アートフェアやデザインフェア、作家の展覧会を継続的に観測し、訪れ、記録し続けることは、メディアに求められる重要な営みのひとつです。例えば「織田コレクション ハンス・ウェグナー展 至高のクラフツマンシップ」(2025/12/02〜2026/01/18)は、ウェグナーの活動を扱う最大規模の回顧展として注目を集めましたが、その評価は単体で完結するものではありません。これまでの関連企画(「織田コレクション ポール・ケアホルム展」や「島崎信+織田憲嗣が選ぶ──ハンス・ウェグナーの椅子展」など)と比較したときに、どのような更新があり、何が引き継がれているのか。そうした視点を記録として残し続けることで、初めて浮かび上がってくるものがあるはずです。


膨大なコレクション展示が話題になった「織田コレクション ハンス・ウェグナー展 至高のクラフツマンシップ」[筆者撮影]
東京都現代美術館で始まった「ミッション∞インフィニティ|宇宙+量子+芸術」も、今回のテーマのひとつである「量子」に限って捉えるのではなく、ARTSATに代表される宇宙芸術や「ミッション」シリーズ(2014年の「ミッション[宇宙×芸術]──コスモロジーを超えて」など)の試み、大阪・関西万博で開催された「エンタングル・モーメント ―[量子・海・宇宙]× 芸術」からのつながりなど、複数の文脈を往復しながら捉えることで、より立体的に理解できるものではないでしょうか。2026年1月末にスパイラルガーデンで開催された「量子芸術祭 Quantum Art Festival 4/4」との違いや重なりを意識することも含め、点在する展覧会やプロジェクトを線としてつなぎ直す視点を読者に提供することが、単体としてのレポート記事制作にとどまらない、メディアに求められている価値であるのだろうと感じます。


上から、「ミッション∞インフィニティ|宇宙+量子+芸術」、「量子芸術祭 Quantum Art Festival 4/4」の様子[筆者撮影]
年明け以降を振り返ってみても、ウェグナー展をはじめ、「活版TOKYO 2026」や「TOKYO PROTOTYPE」など、つくり手たちの思考や感覚に触れることのできるイベントは総じて盛況です。比較的来場者が少ないだろうと思って訪れた1月2日のウェグナー展でも、予想に反して多くの来場者で賑わっていたのが印象的でした。会場を訪れるたびに、想像以上の熱量に驚かされる場面は少なくありません。少し大げさに言えば、「まだまだ捨てたものではない」と思わされる瞬間が、確かに存在しています。


上から、「活版TOKYO 2026」、「TOKYO PROTOTYPE」の様子[筆者撮影]
昨年新たに立ち上がった「alter. 2025, Tokyo」も含め、こうしたアートやデザインの動きは、今後も定点観測の対象として見続けていく必要があるでしょう。その場限りの出来事として消費するのではなく、時間をかけて見続け、書き留め、振り返ること。その積み重ねのなかから、次に見えてくる風景があるのだと思いながら、これからも現場に足を運び続けていきたいと考えています。(h)