「美術館嫌悪(症)」。美術館が特権的な空間であることを明らかにした作品といえば、M・デュシャンの《泉》が名高いが、逆に美術館批判をひとつの目的とした作品が登場するのは、戦後の1960年代を迎えてのことである。この当時流行を迎えた「インスタレーション」「アースワーク」「パブリック・アート」等の諸形態は、いずれも美術館への収蔵を拒む性格をもっており、それ以降美術館制度こそモダニズム芸術の自律性=閉鎖性の最大の原因であるとの論点も取り沙汰されるようになった。そして現在にいたるまで、この問題を最も精力的に論じている批評家としてD・クリンプが挙げられる。徹底したモダニズム批判の徒であるクリンプは、『オクトーバー』誌を根城にマルクス主義的な論点を加味したポストモダニズムの立場から美術館批判を展開、その成果は『美術館の廃墟に』(MIT
Press, 1993)という浩瀚な書物にまとめられている。未だ抄訳しかないが、全訳が待望される。
(暮沢剛巳)
関連URL
●M・デュシャン http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/m-duchamp.html
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