同一の要素を繰り返すこと。もっとも典型的なのは、デザインの領域によく見られる同じパターンの繰り返しである。近年の芸術、ことにミニマル・アートにおいて、反復は重要な用語である。というのも、ミニマル・アートは部分と全体のヒエラルキーのない、単一性と一体の「全体性(wholeness)」を有するのだが、この全体性は同一の構成要素の反復によるからだ。このような反復によっては、内的連関やヒエラルキーは生じないと考えられた。
反復と現代美術の関係に関する考察は、美術史家ロザリンド・クラウスの評論集『アヴァンギャルドと反復(The Originality of
the Avant-Garde and Other Modernist Myths)』(1985)において見出すことができる。彼女は一貫してグリンバーグの歴史主義的なモダニズム芸術観に対して批判的な立場を取るのだが、その際オリジナリティ(originality)と反復という、一見対概念ともとれる概念に不可分の関係を見出すのである。現代の多くの芸術家はグリッドという反復することしかできない構造を使いながら、オリジナルな作品を制作するのだ。そうしてオリジナルな様式を創出すると、さらにその様式を反復することを余儀なくされている。
(三上真理子)
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