シャッターを切れば、ファインダーにとらえられた被写体の画像が切り取られるという写真の本性に「ストレート」に従った写真の俗称。写真というメディアが登場して以来、常に最も多く存在する表現形態だが、写真史上は、絵画的な写真表現を追究したピクトリアリズムに対する反発として位置付けられる。「ストレート・フォトグラフィ」の傾向を真っ先に体現したのは、今世紀初頭にアメリカで開始されたフォト・セセッションの運動であり、極力作家の主観を排除した客観的表現を重んじるその態度は、モダニズムに対応するものと考えることができる。また細部の鮮明な描写に関しては、大型カメラを用いたE・ウェストンの表現が典型だが、H・アッジェやH=C・ブレッソンらの厳格な写真にも、同様の要素を認めることができるだろう。また当然、この考え方は禁欲的なドキュメンタリー写真の発達を促し、饒舌なポップ・アートが隆盛した1960年代に一時的な衰退を経験するものの、1970年代以降はインスタレーションなどの記録媒体として、再度脚光を浴びるようになる。
(暮沢剛巳)
関連URL
●E・ウェストン http://www.edward-weston.com/
●H=C・ブレッソン http://www.npg.si.edu/exh/cb/
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