今年の夏は暑い。そんな暑いときにはもってこいの涼しげな展覧会、というと褒め言葉には聞こえないだろうか。特に《スノウ・ノイズ》などはその極めつけ。太い試験管のなかに下がった糸が媒介物となってそこに絡み付く雪の結晶の美しさと果敢なさは、そこに立っていることにまで緊張感をともなう。生成のプロセスに立ち合い、静寂の中で息までもこらしていると、耳まで澄ますことにつながる。 [8月4日(日) 原久子]
羊飼いプロジェクトでお馴染みの井上信太。京都芸術センターの門を入るとそこここで羊たちが出迎えてくれた。館内にもいろんな場所に羊が放牧されていた。板を羊の形にカットしてドゥローイングを加えたものや、シルエットだけの真っ黒なもの。そして、ギャラリーは立体作品とビデオ映像が一体となってインスタレーションされていた。 中西學は発泡スチロールを使った立体とドゥローイング。物が創造されるにともなって生まれる静かだが力強いエネルギーを感じるドゥローイング。そちらの出来がいいぶん、立体は大きくはあっても中途半端なものに見えてしまった。 [8月9日(金) 原久子]
平田さちは広い展示室の真っ白な床に茶色いココア・パウダーを薄く散らして大きな円を描いていた。円の中に踏み込みたいという衝動にかられる。叶野千晶は旅の記録を写真等で見せていた。「ことばの領分」というタイトルはいかようにも解釈できる。 [8月9日(金) 原久子]