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映画前史

Invention of Cinema
更新日
2024年03月11日

1895年の映画の発明に先立つさまざまな視覚的装置についての歴史のこと。動く映像を投影するための装置は、数世紀もの長い道のりを経て発明された。17世紀半ばにA・キルヒャーらによってガラス板に描かれた絵を投影する幻燈機が発明され、18世紀末にはE・ロベールソンが幻燈機を用いて幻影を映し出すファンタスマゴリアを始めた(幻燈機は18世紀後半に日本に紹介され、写し絵として発展した)。同じく18世紀末にR・バーカーによって考案されたパノラマは、19世紀前半に登場したディオラマとともに、風景が実際に広がっているかのような錯覚をもたらす装置であった。19世紀になると、W・フィトンやJ・パリスによるソーマトロープやJ・プラトーのフェナキスティスコープ、W・G・ホーナーのゾーエトロープ、E・レイノーのプラクシノスコープなど仮現運動によって動きの錯覚を生み出す装置が次々と発明され、F・フォン・ウハティウスの投影式フェナキスティスコープやレイノーのテアトル・オプティックなど、それらの動く絵を投影する試みもなされた。同じく19世紀には写真が発明され、E・マイブリッジの連続写真やE=J・マレーの写真銃、クロノフォトグラフなどの運動を記録・再現しようとする試みを経て、T・エジソンのキネトスコープ、リュミエール兄弟によるシネマトグラフの発明へと至ることになる。

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参考文献

『世界映画全史1 映画の発明:諸器械の発明1832-1895 プラトーからリュミエールへ』,ジョルジュ・サドゥール(村山匡一郎、出口丈人訳),国書刊行会,1992
『映画の考古学』,C・W・ツェーラム(月尾嘉男訳),フィルムアート社,1977
『ヨーロッパ視覚文化史』,ジャン・ピエロ・ブルネッタ(川本英明訳),東洋書林,2010
『幻燈の世紀 映画前夜の視覚文化史』,岩本憲児,森話社,2002
Le grand art de la lumière et de l’ombre: archéologie du cinéma,Laurent Mannoni,Natahn,1994