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オリジナリティ

Originality
更新日
2024年03月11日

近代芸術に特有の、かつ主要な価値のひとつ。個人の制作物をそのほかの類似品から区別する真性性を重視し、芸術家の制作を自律的で根源的な意味性の発生源、すなわち価値の源泉であるとする考え方。芸術が個人の手になる唯一的で一回的な生産であることを暗黙裡に求め、芸術家の創造性や固有性が細部に至るまで芸術作品に反映されているとされるような価値観のことである。それは、父権的生産者としての「作者」の権能のもと、複数の作品の等質的な展開を、作者という唯一の基盤のうえに成立させる。また、長らく美術史学が依拠してきた、特権的な個人を指標として作品の全体性を保証し、複数の作品からさらに大きな全体性を縒り合せていく伝記的記述とも関係している。しかし、近代以前には工房制作が一般的であり、芸術固有の特権意識は現在考えられているものとは大きく異なっていた。そのため「芸術」概念の成立とオリジナリティの重視という現象は、ほぼ随伴するものであったといえる。また、写真や映画などの複製技術の芸術文化への浸透は、それらの技術的条件である反復や機械的生産の原理による市民主義的かつ社会主義的レヴェルへの芸術概念の奪還という反省的な機会を、アヴァンギャルドの芸術家たちに与えた。

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参考文献

『美術史を語る言葉:22の理論と実践』,ロバート・S・ネルソン、リチャード・シフ編(加藤哲弘、鈴木廣之監訳),ブリュッケ,2002
『オリジナリティと反復:ロザリンド・クラウス美術評論集』,ロザリンド・E・クラウス(小西信之訳),リブロポート,1994
『ルネサンス絵画の社会史』,マイケル・バクサンドール(篠塚二三男、豊泉尚美、石原宏、池上公平訳),平凡社,1989
『ベンヤミン「複製技術時代の芸術作品」精読』,多木浩二,岩波書店,2000
『零度のエクリチュール 新版』,ロラン・バルト(石川美子訳),みすず書房,2008