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『芸術と文化』クレメント・グリーンバーグ

Art and Culture, Clement Greenberg
更新日
2024年03月11日

アメリカの美術批評家クレメント・グリーンバーグが生前自らの手で編んだ唯一の批評集。ほとんどのエッセイは出版に際して加筆修正されている。その影響力がピークにあった1961年に出版され、主に『パルチザン・レビュー』誌や『ネーション』誌などの媒体に寄稿したものをもとに纏められた。初期の代表的論考「アヴァンギャルドとキッチュ」(1939)などの文化論のほか、ヨーロッパとアメリカの作家論、若干の文学論などを収める。その構成からは、前衛芸術の政治的・社会的役割への関心を示したマルクス主義およびトロツキズムの影響下にあった初期の活動から、カントに倣った自己批判による還元主義を標榜したシステマティックな批評への移行を窺うことができる。無論その展開は、冷戦下のアメリカでの国家主義的な文化政策の推進や反共産主義などの諸状況とも無関係ではない。シカゴ大学出版局から刊行され、93年に完結した4巻の著作集では『芸術と文化』には収められることのなかった文献や、同書に収められた論考の初出時のヴァージョンも所収され、批評家の中心的な活動期間の全容に触れることができるようになった。日本では、ようやく2005年に入り代表的論考を収めた『グリーンバーグ批評選集』(勁草書房)が刊行された。

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参考文献

『グリーンバーグ批評選集』,クレメント・グリーンバーグ(川田都樹子、藤枝晃雄ほか訳),勁草書房,2005