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パブリック・デザイン

Public Design
更新日
2024年03月11日

「パブリック・デザイン」(公共のためのデザイン)は、狭義には、公共の空間・環境における、不特定多数が利用するトランスポーテーション、サイン、ストリート・ファニチャなどを指す。だが、個人と集団(専門のユースを含む)のどちらにも相応しい食器や電化製品、健常者と何らかのバリアを持つ人々の両者にとって、機能面と美的観点からグッド・デザインである生活用品などもまた、広い意味では、公共のためのデザインと捉えねばならない。そもそもあらゆるデザインには構想・設計の目的があり、これを受容・消費するユーザーが存在するからこそ、成立するものである。デザイン・スクールの卒業制作や純粋なプロポーザル・プロジェクトであっても、目的やユーザーは具体的に設定され、その仮想性が高いほど、アウトプットや提案は、作家性の強いもの、コンセプチュアルなものに傾斜しやすい。一方、特定性が強いと、より個人の、あるいは(良きにつけ悪しきにつけ)限定されたユーザビリティに供するデザインということになる。だが、一つひとつのニーズに対応する解だからといって、それには公共性の視点が不要であるとは言えない。なぜならば、多くの個別性を満たす最適解ならば、不特定多数のニーズにも適い、普遍的なデザインに昇華される場合もあるからだ。あわせて、例えば「赤ちゃんが快適でお母さんが扱いやすいベビー・キャリー」(個人向けのユニヴァーサル・プロダクト)と、「それを存分に活用できる段差の(少)ない駅空間+パーク&ライドが可能な都市環境+信用乗車という制度を伴うライトレール(LRT)」(いわゆるパブリック・デザイン&サーヴィス)とは一体のものであるという点も忘れてはならない。

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