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「未来派舞台美術宣言」エンリコ・プランポリーニ

“Scenografia Futurista”(伊), “Futurist Scenography”(英), Enrico Prampolini
更新日
2024年03月11日

未来派における舞台美術のあり方を問い、演劇の刷新を図ろうとしたE・プランポリーニによる1915年の論考。新しさをモットーとした未来派らしく、プランポリーニは既存の舞台美術(舞台装置)のあり方、特にその絵画的性格を批判し、今までにない、新しい感覚が観客に生まれる舞台になるよう、舞台美術の改革を提唱した。中心となる主張は、書き割り舞台を廃止して、彩色された舞台背景の代わりに「無色の電気機械的な建築」を舞台に据え、その構築物の上に複数の色の照明を放射することにあった。鮮やかでカラフルな光によって輝く舞台にプランポリーニが求めたのは、詩によっても役者の演技によっても得られない独特な感情を、観客が自らのうちに目覚めさせることだった。したがって、未来派の演劇においては、物語も人間の俳優も不要となる。論考において、生きている俳優に取って代わるものとされているのが「俳優―ガス」である。それは、奇妙な雑音とともに、普通の上演にはない意味を付与し、多重的な感情の綜合を表現しうるものとされた。こうしたプランポリーニのアイディアは、E・G・クレイグに依拠するところが多く、影響は特に、人間の俳優を不要と考える点、純粋な運動こそが舞台芸術の要であると考える点に見られる。こうした未来派的舞台のもっとも重要で先駆的なものに、G・バッラ『花火』(1917)がある。ストラヴィンスキーの同名曲を舞台化するにあたって、バッラは俳優がおらず、巨大な物体だけが舞台に存在し、光のダイナミズムが主たる要素となるパフォーマンスをつくりだした。また、プランポリーニの作例としては『マグネティック・シアター』(1925)が知られている。

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補足情報

参考文献

Futurist Performance,Michael Kirby,PAJ Publications,1971
「未来派 1909-1944」展カタログ,セゾン美術館編,東京新聞社,1992