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モデュロール

Modulor(仏)
更新日
2024年03月11日

モデュロールはフランス語で寸法を意味するモデュール(module)と黄金比(section d’or)を組み合わせた造語で、ル・コルビュジエが第二次世界大戦中に考案した建築の基準寸法システム。ダ・ヴィンチの《人体図》などをふまえて、ル・コルビュジエは、人間の身長(ヨーロッパ型で183センチメートル)と臍の高さが黄金比になることに注目すると、人間の身体寸法をフィボナッチ数列を使って分割し、独自の寸法体系として展開させた。建築においてモデュールは、建築の工業化、生産効率などの問題として考えられることが一般的であったが、ル・コルビュジエは、人体の寸法と合わせることで、モデュールに建築の機能的な問題を加味することに成功した。実際に《ロンシャンの礼拝堂》(1955)における有機的な形態や、《ラ・トゥーレット修道院》(1960)の複雑な窓割などが、モデュロールを用いて設計されており、建築の機能的、視覚的側面の設計において、モデュロールの有用性を明らかにしている。なかでも《ユニテ・ダビダシオン》(マルセイユ、1952)においては、配置計画や立面、断面計画から、住戸計画、家具などの造作に至るまで、徹底的にモデュロールが用いられ、モデュロールの合理性を世に知らしめた。

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補足情報

参考文献

『モデュロール1』(SD選書),ル・コルビュジエ(吉阪隆正訳),鹿島出版会,1976
『モデュロール2』(SD選書),ル・コルビュジエ(吉阪隆正訳),鹿島出版会,1976
『ユリイカ』2007年5月号,特集=ル・コルビュジエ 生誕一二〇年記念特集,青土社