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『モデルノロヂオ 考現学』今和次郎、吉田謙吉

Modernologio, Wajiro Kon and Kenkichi Yoshida
更新日
2024年03月11日

昭和5(1930)年に春陽堂から刊行された今和次郎と吉田謙吉による共著書。「モデルノロヂオ」とは、今が提唱した「考現学」(現在進行形の風俗の変遷を考察の対象とする学問)をエスペラント語に翻訳したものである。今は、大正12(1923)年の関東大震災後、復興とともに急速な変貌を遂げていく東京の風俗を観察、記録する作業を開始し、東京美術学校で今の後輩だった吉田もまたこの作業に加わった。彼らは、都市の「明」の側面のみならず、本所深川の貧民窟をはじめとする「暗」の側面についても克明なスケッチを残しているが、同書はそうした観察記録の集大成と言える。同書に収められた膨大な情報のなかでも、大正14(1925)年に銀座で行なわれた定点観測調査に基づく「和装の女性99%に対して洋装の女性はわずかに1%」という数字は特によく知られており、「洋装」「断髪」のモダンガールのイメージでとらえられることの多い当時の女性服飾の実態を知らせる重要な史料のひとつとなっている。ちなみに、1988年に公開された荒俣宏原作の映画『帝都物語』では、いとうせいこう扮する今和次郎が銀座の街行く人々の装いをスケッチする場面が見られる。

著者

補足情報

参考文献

『モデルノロヂオ 考現学』,今和次郎、吉田謙吉,春陽堂,1930
『考現学入門』,今和次郎(藤森照信編),ちくま文庫,1987
『早稲田大学日本語教育センター紀要』20号,「今和次郎『考現学』の射程と比較文化」,佐藤洋子,早稲田大学日本語教育センター,2007年7月
『東京考現学図鑑』,今和次郎、吉田謙吉(泉麻人編),学研パブリッシング,2011
『今和次郎 採集講義』,今和次郎,青幻舎,2011