Artwords®

リバティ・デパート

Liberty Department Store
更新日
2024年03月11日

アーサー・レイゼンビー・リバティがロンドンに開業。新しいデザイン・販売上の試みを他に先駆けて行ない、ヴィクトリア時代後期における美的「趣味」の形成に大きく貢献した小売店。1875年、リージェント・ストリートに開いた小さな店舗で、絹製品に加え、日本の陶磁器・扇子・屏風等を含む東洋の品々を売り始めた。84年、建築家E・W・ゴッドウィンが責任者となり服飾部門が開設され、社内でデザインしたゆったりした仕立てのドレスを販売した。85年には「チェシャム・ハウス」を増床、地階は「イースタン・バザール」と呼称され、絨毯や室内装飾品等を揃えていた。と同時に、機械製によるテキスタイルや家具等の製品を提供し、リバティ製品は先進的なデザインとみなされ、国際的に人気を博す。リバティは、デザイナーの匿名性を保つ方針を推進した。同社には、アーツ・アンド・クラフツ展覧会協会のメンバー達もデザインを提供したが、参加した多様なデザイナーの個性には調整が加えられて様式上の差異が減り、共通してそれと認識可能なスタイルが付与されて生まれたのが、リバティ・スタイルである。イタリアではアール・ヌーヴォーが「スティレ・リバティ(リバティ・スタイル)」と呼ばれたことからも、その一貫したスタイルが認められていたことがわかる。リバティに雇用されたデザイナーには、テキスタイルにチャールズ・ヴォイジー、リンジー・バターフィールド、アーサー・シルヴァー、金工では、アーチボルド・ノックスがいる。顧客には、フレデリック・レイトン、エドワード・バーン=ジョーンズ、J・M・ホイッスラーら画家やオスカー・ワイルドなどがいた。同店は、唯美主義運動およびジャポニスムの流行を先導する存在であった。

著者

補足情報

参考文献

『ドキュメント リバティ百貨店』,アリソン・アドバーガム(愛甲健児訳),PARCO出版局,1978
The Liberty Style,Victor Arwas,Academy Editions,1979
「リバティ・スタイル」展カタログ,東京都庭園美術館、国際芸術文化振興会企画編,国際芸術文化振興会,1999
『リバティ・デザイン  「文化資本」としての「よき趣味」』,山田眞實,創元社,1999