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ロトスコープ

Rotoscope
更新日
2024年03月11日

ロトスコープは実写映像をベースにしてアニメーション映像を作り上げる技法である。発明したのはのちにフライシャー・スタジオを設立するフライシャー兄弟の兄マックスで、1917年に特許を取得している。10年代のアメリカはアニメーションの産業化の時期にあたる。分業による大量生産が志向されるなか、ロトスコープは未熟なアニメーターでもリアリティのある動画制作を可能にするものとして当初は考案された。しかしフライシャーはむしろ、実写をなぞることでできあがる動きの奇妙さ(単純化を行なうアニメーションにそぐわないリアリティの創出)に注目し、その物珍しさを興行的な売りとすることとなった。一方、ディズニーは逐語的に映像をなぞるのではなく、トレース箇所を選択することにより、キャラクターの動きにリアリティを付与する方向を選んだ(『白雪姫』、1937)。中国やソ連の国営スタジオにおいても、ディズニーの影響から、同様の技法が用いられるようになる。ロトスコープは歴史的に議論の的となっており、実写を用いるがゆえに純粋なる運動の創造ではないという批判をつねに浴びてきた(ラルフ・バクシの実践など)。デジタル技術の進展はロトスコープに新たな光を当て、ボブ・サビストンが開発したデジタル版ロトスコープ「ロトショップ」は、リチャード・リンクレイターのアニメーション作品『ウェイキング・ライフ』(2001)や『スキャナー・ダークリー』(2006)などに用いられることで脚光を浴びた。

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補足情報

参考文献

Animation Journal,volume.2,”Introduction to the Fleischer Rotoscope Patent”,Mark Langer,AJ Press,1993
Animation Journal,volume.12,”Rotoshop in Context: Computer Rotoscoping and Animation Aesthetics”,Paul Ward,AJ Press,2004