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『20世紀の人間たち』アウグスト・ザンダー

People of the 20th Century(英)/Menschen des 20. Jahrhunderts(独), August Sander
更新日
2024年03月11日

ドイツの写真家、アウグスト・ザンダーが20世紀初頭に試みた、ポートレート写真によってひとつの社会の全体像を記録しようとした作品。ザンダーは1910年前後から、ドイツ・ライン地方の人々の肖像を、「農夫」「職人」「女性」「職業と社会的地位」「芸術家」「大都市」「最後の人たち」の7つに分類して網羅的に撮影し始める。そしてそれらを集積することで、ドイツ社会の一時代を写し出すドキュメントを作り上げようとした。その過程で、29年に写真集『時代の顔』を発表。これは500枚以上の写真による12分冊の写真集を制作するという『20世紀の人間』刊行計画のうちの第1冊目として実現されたものであった。しかし、34年にナチスが印刷組版を押収・破棄したため、計画は頓挫に追い込まれ、ザンダーは被写体を風景や建築に変えざるをえなくなった。初期写真を集めた写真集が出版されたのは、戦後60年代に入ってからである。また、没後の80年に『20世紀の人間たち』が刊行され、ザンダーに対する国際的な評価を高めた。2002年には、7巻からなる写真集が発行されている。なお、ヴァルター・ベンヤミンは著作『写真小史』(1931)のなかで、『時代の顔』を「演習用の地図帳」と評している。

補足情報

参考文献

Deutschenspiegel: Menschen des 20. Jahrhunderts,August Sander,Sigbert Mohn,1962
Menschen des 20. Jahrhunderts: Portraitphotographien 1982-1952,August Sander,Schirmer/Mosel,1980
『20世紀の人間たち 肖像写真集 1892-1952』,アウグスト・ザンダー(山口知三訳),リブロポート,1991
『アウグスト・ザンダー写真集 肖像の彼方』,バーバラ・ゲブラー編(池田裕行訳),アルス・ニコライ出版,1993
August Sander: People of the 20th Century,Susanne Lange and Gabriele Conrath-Scholl,Harry N. Abrams,2002