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2012年09月15日号のバックナンバー
フォーカス
「現代美術用語事典」のあゆみ──Ver.2、1,500語達成のお祝いにかえて
[2012年09月15日号(暮沢剛巳)]
artscapeの現代美術用語事典Ver.2β版、1,500語達成、おめでとうございます。数年前にこのβ版の話が持ち上がった際、1,500語が目標と聞いてそんなことが可能なのか半信半疑だったのですが、実際に達成したというのだから凄いことです。このβ版の前身に当たるVer.1の制作に深く関わったものとしても感慨を覚えずにはいられません。今回このような機会をいただいたので、まずはβ版の制作に関わった編集部や執筆者に敬意を表すると同時に現代美術用語事典の2つのヴァージョンについて自分なりの立場からコメントさせていただきたいと思います。
日本ファッションをめぐる、時代的-世代的な乖離と捻れ──「FUTURE BEAUTY 日本ファッションの未来性」展レビュー
[2012年09月15日号(井上雅人)]
1970年代後半から、日本のファッションは世界に誇れるものだという自負が、徐々に芽生えはじめた。最初はケンゾーひとりだったパリで活躍するデザイナーも、80年代の半ばには両手では数えきれないほどになっていた。その頃からファッションは、建築や映画とならんで、日本を代表する現代文化として国内外に紹介されるようになった。ファッション・デザイナーたちの作品は、文化といえば江戸より前のものしかない神秘的な遅れた国と、無表情な労働者たちが安くて質のいい工業製品を世界中に売りさばくエコノミックアニマルの国という、日本のふたつのイメージのあいだを埋めてくれる貴重な存在になっていった。
キュレーターズノート
古武家賢太郎展「Letters(レターズ)」
[2012年09月15日号(角奈緒子)]
瀬戸内海に面した風光明媚な街、広島県尾道市。かつては小津安二郎監督の『東京物語』が撮影され、また、大林宣彦監督の『転校生』や『時をかける少女』などもこの地で撮影されたことから、映画ファンにはよく知られた街ではないだろうか。平地が少なく、山腹の急勾配の坂にひしめくように古い家屋が立ち並ぶ、どこか懐かしさの漂うこの街を訪れた。
國府理「ここから 何処かへ」、伊藤彩「猛スピードでははは」
[2012年09月15日号(中井康之)]
それにしても暑い夏だった。夏が終わるころ、毎年そのような感を抱いていたかもしれないが、今夏の暑さをより一層不快に感じさせたのは、此の国を覆っているさまざまに困難な状況であることは疑いえない。去年の夏は、ことの重大さに対していまだ判断をするための情報を十分にえることができていなかったのか、あるいはあまりも偏った情報が過度に流されたために受容できる容量を大幅に超えたため無反応になっていたのか、今夏のように重苦しい不快な感覚を持つことはなかったように記憶している。これは、あくまでも個人の気分的な物言いにすぎないが……。