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2022年12月01日号のバックナンバー
フォーカス
【上海】現代アートマップ2022
[2022年12月01日号(金澤韻)]
中国では都市の光景がどんどん変わっていく。雰囲気のいいカフェや美味しいレストランなどの情報の有効期限はせいぜい1、2年だし、人気のショッピングモールも流行り廃りが激しい。そのなかで、現代美術を見ることのできる場所も、──カフェやモールに比べれば安定しているとはいえ──やはり移り変わっていっている。こういった変化は、中国人の自他共に認める「新しいもの好き」な性格にもよるのだが、大きくは地方政府による積極的な都市開発の結果である。その意味で、この土地特有のエコシステムを示しているともいえるだろう。
この記事では、2022年12月時点での上海アートマップを記述してみようと思う。ガイドとしての機能も意識しつつ、この時代の様相を振り返るひとつの記録になることを企図する。
キュレーターズノート
生態系のなかの群れとしての人間観──「とうとうたらりたらりらたらりあがりららりとう」展
[2022年12月01日号(能勢陽子)]
「とうとうたらりたらりらたらりあがりららりとう」という、意味はわからないが響きとともに耳に残る展覧会の名は、最古の能楽『翁』の冒頭で唱えられる言葉だという。筋書きも時代設定もなく、神事に近いというこの能の始まりに発せられる言葉は、あらゆる意味を超えたすべてのものとしての「翁」の到来を知らせるものだろうか。展覧会では、この「翁」を通して、人、動物、虫、さらに小さな細胞、そして水、火など、生物が生きる環境にある有機物、無機物すべてを包摂した、新たな自然観を探ろうとする。
美術家を囲む郷土(ローカル)と、そこから立ち上がる景色──福岡の二人の作家の活動を通して
[2022年12月01日号(正路佐知子)]
アーティストやアートスペースの活動を通して、美術館の活動や美術館学芸員としての自身の足元を見つめなおすことは少なくない。この秋、そのような観点から特に気になった二人の美術家の活動を紹介したい。どちらもアーティストが主体となり、時間をかけて準備された企画である。
トピックス
スタッフエントランスから入るミュージアム(7)野外彫刻のガーディアン──変化する環境から作品を守る
[2022年12月01日号(有田司/坂口千秋)]
紅葉を背景に駅前の広場や公共施設の前などの野外彫刻が映える季節。しかし、屋外に作品を展示するということは、春は成長する樹木と鳥のフン、夏は高温多湿と台風や虫の巣、秋は落葉、冬は雪と低温、そして年間をとおしての排気ガスや火山灰など、作品の保存という点でトラブルが多すぎる。美術館という箱のなかの作品とは違った独特のメンテナンスが必要なはずだ。知られざる「アートの仕事人」に出会うこのシリーズ、今回は彫刻の森美術館で野外彫刻の保守・修復をされている有田司さんを取材した。(artscape編集部)