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2023年02月01日号のバックナンバー

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フォーカス

【ベルリン】AIアバターとアーカイブ映像の融合が示すあり得た歴史とオルタナティブな社会──C・クーレンドラン・トーマスの映像メディアインスタレーション

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[2023年02月01日号(日比野紗希)]

ベルリン在住のタミル系アーティスト、クリストファー・クーレンドラン・トーマス(Christopher Kulendran Thomas)の個展「Another World」がベルリンのクンストヴェルケ現代美術センター(KW Institute for Contemporary Art、以下、KW)とロンドンのICA(Institute of Contemporary Arts)で開催された。
クーレンドラン・トーマスと共同研究者であるドイツ人キュレーター/プロデューサーのアニカ・クールマン(Annika Kuhlmann)が手掛けた同展は、スリランカ内戦におけるタミル・イーラムの独立運動の敗北をめぐる物語を扱い、鑑賞者に現実と虚構の境界線を観察する機会をAIとのコラボレーションによって提示している。

キュレーターズノート

「コレクション」を考える(6)──宇都宮美術館の「これまで」と「これから」

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[2023年02月01日号(志田康宏)]

本連載ではこれまでに、美術館に寄贈することが前提とされた個人コレクション、個人コレクションが公立美術館になった事例、美術館に入った個人コレクションを再パッケージ化した展覧会、開館50年を迎えた美術館の展覧会、そして新たに開館した美術館のコレクションをレポートしてきた。それらを通じて、一端ではあるがさまざまな「コレクション」のかたちを考えることができたように感じている。また元来そうしようと意図したわけではなかったのだが、初回記事以外すべて栃木県内の事例をレポートすることになった。「コレクション」に関するさまざまな現象を見ることができる事例が、たまたま栃木県内で連発していたタイミングだったことによるものである。
連載最終回となる今回は、開館25周年を迎えた宇都宮美術館で開催された全館コレクション展「これらの時間についての夢」を取り上げ、すべての美術館に共通しうる美術館の「これまで」と「これから」について考察したい。

「合田佐和子 帰る途もつもりもない」を歩く──肉体から視覚へ

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[2023年02月01日号(橘美貴)]

12月、高知県立美術館で開催されていた展覧会「合田佐和子 帰る途もつもりもない」(その後三鷹市美術ギャラリーに巡回、3月26日まで開催)を訪ねた。伊村靖子氏らのレビューで触れられているように、本展覧会では立体、絵画、舞台、写真、執筆など多岐にわたる合田の作品や活動が丁寧に取り上げられている。そのような多様な仕事の背景には、二度の結婚やエジプト移住などの私生活の変化があるのだが、筆者には初期の立体作品に強く表われていた合田自身の気配が、1970年代の絵画で突然消えたように感じたことが印象的だった。立体と絵画というジャンルの違いがあり、絵画で描かれたのは欧米の俳優たちであるのだから合田自身の存在が作品のなかで薄まるのは当然だろう。しかし、改めて見ていくと、初期の立体作品群の区切りとなる《母になったミュータント》(1970)ですでにその変化の兆しのようなものが感じられた。そこで本稿では《母になったミュータント》に至るまでの立体作品の変遷をたどり、本作について考えたい。

artscapeレビュー

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