Dialogue Tour 2010
ホテル山上やアーティストとシェアする感覚
宮城潤──〈建築〉という話のなかで、関係性の再構築という話がありました。青森市には県立美術館やACACがあって、弘前、八戸、十和田などにもいろいろな主体がありますが、MACはそのあたりとはどんな関係をとっていますか。
服部──基本的にはきわめてニュートラルな立場を取っています。近くにいてもこれまでは一緒になることが少なかった人たちがいっぱいいて、僕がよそ者だったこともあって、MACができて、そういう人たちが同じ場所に居合わせる状況を少しずつつくれているかなとは思います。
宮城──山口のMACを3人でシェアしていて、青森に引っ越して、ひとりでやるときに、運営のしかたで変わったことはありますか。
服部──最初は青森でも山口のような形態がいいなと思っていましたが、知らない土地にひとりで行って、いきなり家をシェアして住むのはなかなか難しかったです。でも、最初にホテル山上に出会ったことが大きくて、ホテル山上に対して僕が関わっていくなかで、その周囲の人と無理のないかたちで恊働するということなら可能性があるかなと思ったんです。ある種の寄生ですね。やはりひとりではできないと思っています。滞在制作といっても自分は仕事をしているし、四六時中、作家と一緒にいられるわけではないので、誰か関わってくれる人がほしい。そのときに、ホテル山上なら、旅館で常に人がいて、ちょっと困ったら助けてくれたり、アーティストがいたら一緒にご飯を食べたりもできるかなと思って……、ある種、ホテル山上とシェアしている感覚に近い状態で、その存在は非常に大きいですね。というか、ホテル山上が存在するからこそいまのかたちのMACが継続できているという感じです。ほんとうにありがたいです。
宮城──MACのブログでも自分だけでなく、滞在作家が書いたり、山上さんが書いたりしていますが、それは意識的ですか。
服部──最近は意識するようにしています。正直、最初は偶然です。当初から、MACの活動を記録していく方法をどうしようか考えていて、狩野さんが来たときに、「一応、ブログをやってるんだけど」という話しをしたら、「僕が書こうか?」と言ってくれて、そんなところからスタートしています。ホテル山上の息子の山上くんにもアカウントを教えて、「なにかおもしろいことがあったら書いてよ」という感じで、彼にもたまに書いてもらっています。この年末には、山上くんと出月秀明さんというベルリン在住で過去のACACのレジデンスアーティストの主催で、ホテル山上全館を使った出月さんの個展を実践しました。その際には山上くんがブログでレポートを書いてくれています。これも彼らしい視点のいい記事です。そんな感じでよくわからないけど、なんだかいろいろやっているなという感じが見えたらいいなと考えて始めました。
宮城──誰が書いているかはわかる感じですか。
服部──投稿者が自分の名前を記述したりしていることもありますが、そこまで明快にはしていないですね。書いている本人に委ねている感じです。見る人によっては、毎度全然違う書き方と思われてもしかたがない感じです。でも、それはそれでいいかなと。