GALLERY crossingでは5月11日(土)〜5月26日(日)まで、美術作家・𡧃野 湧による個展を開催します。当ギャラリーでは初の個展となる今展では、陶器で作られた平面作品を中心に、新作を展覧いたします。ぜひこの機会にご高覧ください。

移ろう日々の中で、忘れたくない記憶がある。人はそれを記し、描き、写すことで保存しようと試みるが、それでもやはり、一瞬の全てを記憶しておくことは不可能だ。時と共に欠け、肝心な部分が抜け落ち、矛盾し、混沌としながらもなお、忘れられずに残ったものを、私たちは大切に保存し、記憶の欠片を愛でている。𡧃野湧は、自身の忘れ得ぬ記憶を陶土に描き、窯で焼いて「やきもの」にする。やきものを「人の手によって時間を押し進められたもの」だという𡧃野は、制作は、永遠に近い存在になった「やきもの」の記憶を、粉々にすることで再び自らの実感に引き戻す行為だという。記憶の生々しさを繋ぎとめたいと願い、そこに存在した瞬間の光を永遠の光に変換し、「やきもの」という新たなカタチを与えられて紙上に呼び戻された粉々の絵画を眺める時、私たちの生の痕跡は、このような行為の連続によって残っていくのかもしれないと想う。／GALLERY crossing　黒元実紗

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𡧃野 湧｜UNO Yu
1996年大阪府生まれ、京都府在住。美術作家。ワレモノとしての陶磁に着目し、あえて破損や経年変化を取り入れながら作品を制作する。文化や美術の歴史における保存の在り方を念頭に、ものの存在やものへの触れかた、その遺し方についての新しい視点を提案する。主な発表に 2024年 TRANSIENT ENCOUNTER（GALLERY crossing／岐阜）、2023年 MIND TRAIL 2023 奥大和 心のなかの美術館（吉野山／奈良）、Slow Culture # kogei（京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA）、ARTIST’S FAIR KYOTO 2023（京都新聞社）、2022年 個展「われてもすえに・その後１」（LAD GALLERY／名古屋）、2021年 個展「欠け端のセラミクス」（Alternative space yuge/京都）など。