太田三郎(1884~1969)は愛知県清須市西枇杷島出身の画家です。10代で上京し、まず日本画を学んだのち、洋画に軸足を移し官展などに出品。洋画家としてキャリアを重ねるかたわら、雑誌や小説の挿画、絵はがきなどの大衆媒体において印刷物・版画の表現にも取り組みました。文筆活動にも積極的で、初学者やアマチュア画家に向けた創作の指南書のほか、民俗学と美術史に関する研究をもとにした著作を数多く残しています。
 戦後、愛知に帰郷。中部日本美術協会の委員長として東海地域の美術家たちのまとめ役を務めたほか、1955年に開館した愛知県文化会館の美術科長に就任し、地域文化の発展に尽力しました。
 画家、文筆家、研究者、組織の長など、「オールラウンダー」として足跡を残した太田三郎。本展ではこれまであまり顧みられてこなかったこの作家について、没後初めて概観します。