音の出ないコンサート、音を見るオブジェ、音に触れる機械…。岡山県倉敷市出身の藤原和通(1944-2020)が手掛けた仕事は、多岐にわたりながらもその中心には常に“音”がありました。このたび岡山県立美術館では、音に対して幅広いアプローチを行ったアーティスト・藤原和通の特別展示を開催いたします。
藤原は1960年代末ごろから、石(コンクリート)と木で制作された巨大な楽器を「音具」と名付け、多くの人で擦り合わせる観衆参加型のコンサート《音響標定(エコー・ロケーション)》を開催し、1976年ヴェネツィア・ビエンナーレに招待されるなど注目を集めます。一時期をイタリアで過ごし、1988年に帰国した後は、当時流行していたウォークマンとの出会いから、音の世界の拡がりを感じ、それが機械を通して記録されるということに関心を向けるようになります。自身で高性能の録音用マイクを開発し、世界中を飛び回り様々な音の記録を行い、1992年から1994年まで放送されたテレビ番組『ウゴウゴルーガ』で「おとのはくぶつかん」のコーナーを担当したり、2003年には京都に音を販売するショップ「オトキノコ」をプロデュースしたりするなど、美術の枠を超えて活動の幅を拡げていきました。2007年には音を触覚へと変換できるコミュニケーター《dayon》を商品化して一般発売しますが、そのコンセプトからは藤原の活動初期から変わらない、音の存在を知覚し楽しもうとする意識が感じ取れます。
本展では、藤原の作品や手掛けたプロダクト、記録された音に加え、当時の活動を伝える写真や資料などを紹介し、彼が伝えようとした音の魅力に迫ります。[美術館サイトより]