金沢に生まれ、金沢美術工芸専門学校(現金沢美術工芸大学)で宮本三郎に師事し、生涯をかけて「人間とは何か」を絵にした画家・鴨居玲(1928-1985)。「酔っ払い」や、「おばあさん」など、彼が手掛けた人物は「人間の性」を表現する重要なモティーフでした。スペイン、パリなど海外生活を通して確立した画風は、貧しく苦しい生活を送る人々の姿を捉え、人生の悲哀、孤独を浮かび上がらせました。そして「教会」を主題とした作品が語るように、鴨居にとって「写実」とは、現実をありのままに描くのではなく、「見えないもの」を表現することでした。

本展は鴨居が選んだモティーフに着目し、鴨居芸術にアプローチします。また回顧展では初出となる約90点の挿絵原画も紹介します。