彫刻家にとって人物像の表現は主要なテーマといえます。それは、彫刻という概念が、人間中心の西洋思想の中で育ったものであるということに起因します。特に、物をよく見てその本質をさぐろうとする「写実」を大切にする作家たちにその傾向は顕著です。日本では戦前から前後にかけて、西洋に影響を受けながら写実表現を追求した、「官展アカデミズム」とよばれる作家たちがいました。本展ではその系譜にいる館林生まれの藤野天光(1903-1974)の生誕120年を記念し、師の北村西望(1884-1987)の作品とともに特集します。
生まれ故郷の群馬県下仁田町で、自らの生活に根ざして人間をみつめる三輪途道(1966-)もまた「写実」を追求する彫刻家です。本展では、2000年前後に制作された木彫による半身像を出品するほか、目が見えなくなってから生み出された作品は、凸凹とした力強い形態を手で触れて鑑賞できる展示となります。[美術館サイトより]