雪を思わせる白い平原を分けるように、空の色を映す川の流れは蛇行しながら遥か彼方にのびて行く。画面から春の匂いを感じるのは、黄色く染め上げられた空のせいなのか、それともいつか見た風景の記憶が呼び起こされるからなのか―。
当館では15年ぶりとなる関口雅文(1970-)の個展を開催いたします。当館では15年ぶりとなる関口雅文(1970-)の個展を開催いたします。前回2010年の個展の際に、関口はこんな言葉を寄せてくれました。

「 … 確かに、我が故郷には派手な色の鳥が飛んでいたわけもなく、熱帯魚の様な鮮やかな色の魚が川を泳いでいたわけもない。でも『あなたの色彩が何処で育まれたのか?』と問われれば、僕にはどう考えてもこの十日町しか思い浮かばない。
 …(中略)… 
ここでは水や空気までも美しく、ここに暮らす人々も限りなく澄んでいて、何もかもが美しい。そんな『まほろばの地』で僕は育った。 … 」

ここ十日町で暮らしている身にとっては、正直面映ゆく感じる部分もありますが、故郷にこんなにも美しい心象風景を抱いていてくれる人がいるということに、少なからず誇らしさも覚えます。陰鬱な灰色の空の印象に囚われがちな雪国も、関口が描く雪景色には何もかもを奪い去るような凍てつく寒さではなく、見守られているかのようなあたたかさを感じます。その景色は幻想に近いものなのかもしれませんが、世界はこれほどに美しい光に溢れているのかという希望をくれるのです。
今展では新作を含め40点余を展覧いたします。関口が描き出す色彩の世界への旅をぜひお楽しみください。きっと晴れやかな希望が沁み通って行くことでしょう。